本の話や宇宙の謎、猫の神秘、自作小説など、目についたものをなんでも盛り込むブログ。

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第六章(5)


《……言うがよい》
 形ばかり、剣の切っ先を下げてみせる。
 それを鼻で笑い、アキラは傲然と顎をしゃくった。
「蝶として出てきた黄金色というキーワード」
 抱えていた兜を目の前にかざす。
「歴代の後継者たち。おまけに名前だ」
《何を言っておる? それは───》
「黙って聞け!」
 足を踏みならして、髑髏にも見える兜をしっかりと掴んだ。
「全部俺の弱点じゃねえか! つまり俺の中に存在している“負の想念”というわけだ。それを操れるモノの名は───邪鬼! 俺は今まで、邪鬼の層を突き抜けてきただけなんだ。いい加減に正体を現わせ!」
 アキラはそう言うなり、大きく振りかぶって兜を投げ付けた。
《ううっ……!》
 真っすぐ騎士の頭に命中し、足から崩れ落ちてゆく。
《口惜しきなり。後継者め、次は、逃さぬ───》
 強い酸に冒されていくように、黒い煙となって、その姿は消えていった。
 質量を伴った煙は、空中で纏ると固まりになって逃げてゆく。集合体が押し込められている場所にでも戻っていったのだろう、妖魔は邪鬼の居場所を『井戸』と呼んでいた。
「“次”なんて、ねえよ!」
 逃げ遅れた一握りの邪鬼に叫んだ。
「あったとしても、また俺が勝つ!」
 上空から凄まじい咆哮が響いた。負の産物以外の何物でもない、生々しい怒りに満ちた声だった。
 にこやかに手を振って見送ると、
「さて、と……」
 手をはたきながら扉に歩いていく。もう遮る者のない入り口は、アキラを待っているように見えた。
 把手を掴もうとして、アキラの手は空を切った。不思議そうに自分の手と扉を交互に見て、首をかしげる。何かがおかしい、何かが……
「あああっ!」
 思わず一歩、後退って叫ぶ。
「これ、取っ手ないじゃんかよ! どうやって開けんだ?」
 中央に板の合わせ目があるので、開けられることは間違いない。引き戸と同じように、指をこじ入れて滑らそうとしたが駄目だった。
 アキラはすばやく背後に目を走らせた。
 いつの間にか闇が覆っているだけで、邪魔をしている者の姿はない。では、どうして開けられないのだろうか。
 腕組みをして難しい顔をしていたアキラは、くすりと笑った。
「要はぶち破ればいいだけの話だな」
 と、服の袖をまくり上げる。
「頼むぜえ……」
 生意気な猫みたいな顔で呟くと、スタートダッシュの姿勢から、一気に肩から扉に体当たりした。
 重厚で、押しても引いても一ミリだって動かない、と思われた扉は───アキラの肩が当たる瞬間、すでに開き始めていた。
 とっさに急停止しようとしたが、やる気充分の身体はアキラの命令には従ってくれない。……そして、勢い余って派手に転び、何が起こったのか解らないままアキラは目的の場所に辿り着いた。
 茫然と、顔を押しつけているのが草の茂る地面であるのを感じながら、そのまま動けなくなった。
「……そなた、随分と騒々しい入り方をするのだな」
 頭の上から、やはり呆気に取られている声が降ってきた。黒蝶の時と同じで、よく通る低い声である。
 アキラは顔を上げる気力もなかった。
「あのよ、扉が開かなかったんだけど……」
「開いたではないか」
「いや───ええっと……」
 深刻な疲労に襲われて、そのまま帰りたくなる。
「俺が訊きたいのは、どうして急に開いたかってことなんだけど」
「私が開けたからだ」
「そうじゃなくて……じゃあ、どうしていきなり開けたんだ」
「扉を壊されてはかなわんからだ」
「だったら、最初に取っ手をつけておくべきじゃないか?」
「いや、扉があったら普通はノックをするものだと思うが……」 
 戸惑いを滲ませた声に、アキラは目を閉じた。何かがおかしかった。何かが……


第七章(1)に続く。


ゼエゼエ……ハアハア……

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コメント
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2008/10/26(日) 14:17 | | #[ 編集]
こんにちは~、いらっしゃいませ!
おほめの言葉をいただきまして、嬉しくて舞い上がっている孔雀堂です(^^) あなたのお陰で、更新ストップしていた小説をアップする勇気がわいてきました。ありがとうございました。
まだまだ精進しなければならない私ですが、これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2008/10/27(月) 10:17 | URL | 孔雀堂 #-[ 編集]
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