本の話や宇宙の謎、猫の神秘、自作小説など、目についたものをなんでも盛り込むブログ。

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第六章(4)


 胸元に剣を突き付けられ、アキラは顔をしかめる。二体の騎士からは、なぜか気配というものを感じられない。
 しかし空洞でもなさそうだった。
 目を細めて騎士たちを見据え、唇を噛む。
「俺の名は、紫堂アキラ」
 半歩後ずさると、軽く腰を落とした姿勢で力を溜める。
 その姿を、剣の先が追いかけてきて、狙いを定めた。
《……王名表には載っておらぬ》
 騎士は鎧の肩を軋ませて、得物を両手に持ち直した。アキラは目を離さないまま、人差し指で唇に触れる。
 集中するときの癖だった。
「王名表に載っているのかいないの……そんなの知ったことか。人間の親から譲られた『紫堂』、そして自分で選んだ『アキラ』、俺はこの名前しか使わない」
《正式な名を申せ。通り名は認めぬぞ》
「別に認めてもらわなくても構わねえ! だが、そこは通してもらう」
《ならぬ! 我らの承認なきもの、扉を開くこと能わず》
「なら、ぶち破るまでだ───」
 石の床で、革靴を高らかに鳴らせると、アキラは盾を持った騎士の背後に飛び込んだ。
「どうしても行かなきゃなんねえんだよ!」
 無防備な背中に体当たりを仕掛ける。よろめいた足元を掬うと呆気なく転がり、グローブのような手甲が弾け飛んだ。掴んでいた『王名表』も一緒に……。
 ぶん、という唸りに、咄嗟に身体を屈めると、幅広の剣が頭の上を薙いでいった。騎士は片手持ちに替えて、以外と素早く態勢を整える。
 袈裟懸けに切り付ける剣は、アキラが寸前で飛びすさった辺りを大振りに切っていった。
 その足元に頭から転がり込み、後ろから羽交い締めにする。
「邪魔すんじゃねえ、このブリキ野郎が!」
 振り落とそうともがく騎士の、兜に手を掛ける。───と、いつの間にか盾を持った騎士がアキラの背後に回り、襟首を掴んで引き剥がした。
 猫の仔のようにぶら下げて、無造作に壁に叩きつける。
「……そうは問屋が卸さねえんだな!」
 空中で身体を丸めたアキラは、足から壁に着地して、その運動性で跳ね返った。
「アターック!」
 腕を突きだした姿勢で騎士に飛び掛かる。
 アックスボンバーをかませ、吹っ飛んだ騎士ともつれ合って上下左右が解らないほどに転がった。手に触れた物に掴まるが、それも共に床を跳ねているのだった。
 鎧が石を削る、生理的に厭な音が響いた。騎士よりも二回転半余計に回った手には、兜がしっかりと掴まれている。中身が入っている確かな手応えに、アキラは急に怒りが噴き出してきた。
「顔を見せろ!」
 肩の辺りを足で抑え付けて、乱暴にもぎ取る。すると、騎士の中にいる人物の顔が現れた。黒髪に色白の頬、薄い唇と切れ長の大きな目───。
 そして、緑掛かった瞳。
「あ、俺……?」
 間違えようもなく、それはアキラの顔だった。
 ゆっくりと輪郭をぼやけさせ、見ている目の前で消えてしまう。後にはカラになった甲冑だけが残された。
「俺を拒んでいたのは、俺自身ということかよ……」
 気配を感じなかったのは、自分自身だったからなのか。同じ波長は殺し合うものと決まっている……。
「ってことは───」
 アキラは、もうひとつの甲冑が近付いてくる音に振り返った。剣を光らせながら、こちらを見据えている。
「なるほど、大体読めてきたぜ……」
 もぎ取った兜を小脇に抱え、正面から騎士を睨み付けた。
「本当の名を言ってやろうか?」
 騎士の歩みが止まった。


第六章(5)に続く。


あの……そろそろ終わりに、したいんですけど……

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