本の話や宇宙の謎、猫の神秘、自作小説など、目についたものをなんでも盛り込むブログ。

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第六章(3)


 階段の手すりに摑まって何もない空間を見下ろすと、安全なところまで後ずさりしてから考え込む。後継者たちの不可思議な行動───そしてさっきの男が見せた仕草。
 アキラは再び黒い空間を覗き込んだ。円筒形がどこまでも地下へと続いているらしく、底はまったく見えない。
「俺、もしかして考え違いをしている?」
 口の中で呟いて、元来た方へと目を向ける。
 次の後継者は降りて来ない。さっきの男で列が終わったのかもしれなかった。
「ということは……あの男は、今の統皇か! まだ後継者だったころの統皇!」
 アキラは笑いの発作を起こしそうになる。
「そういうことかよ! ばかばかしい!」
 言うなり、アキラは勢いよく階段の縁から飛び降りた。今までたくさんの後継者たちがしてきたように……
 アキラは一気に陽の射さない闇まで落ち、両手を広げた格好で彗星と化した。風圧でジャンバーが脱がされそうになり、剥出しの顔と手が固い空気にこすられて引き攣れる。
 身体のあちこちが悲鳴を上げた。
 鼻と口は否応無しに空気が潜り込み、乾き切ってひび割れた。耳はもぎ取ってしまいたくなるほどの風切り音を奏でて、壊れる寸前だ。眼球の水分は弾き飛ばされて、瞬きすら出来なくなった。
 それでも、アキラは自分のとった行動が正解であるという確信があった。ガムシャナが『前に進め』といった一言を馬鹿正直に実行した後継者たち……道が途絶えても、進める限りは前に進もうとする心は、ガムシャナを信じるという精神の証でもあった。
 全身の軋みに耐えるアキラの隣に、若い頃の統皇が現れた。祝福するように微笑み、実体のない気楽さでアキラに重なって消える。
 同じように、後継者たちは順番に現れてはアキラと同化していった。誰もがいたわりと慈愛の表情を浮かべ、一体となるのを喜んでいるようだった。
 歴代の後継者たちの力が満ちてくる。
 いつしかアキラの全身を優しく包む空気があった。大きな手で抱き留められたような安心感に、アキラは戸惑いながらも自分自身をすべて預けた。自分の中にいる後継者たちが、それを望んでいる気がしたからだった。
 長かった落下が終り、薄暗い場所が見えてきた。羽衣をまとった天女のように、アキラはふんわりと床に降り立つ。
 風圧に痛めつけられた体はどこにも痛みはなく、気力は充実していた。
 周囲を見回すと、どこかの広間らしい場所に着いたようだった。古めかしい装飾に彩られ、どこか前世紀の遺物といった感がある。
 金糸銀糸で彩られたタペストリーがいかめしく飾られ、上部にステンドグラスを嵌め込んだ窓がある。窓枠には葡萄の蔓を様式化した浮き彫りが施され、さり気ない上品さで広間の空気を引き締めていた。
 次に進むべき道は示されている。
 両脇に甲冑の騎士を従えた扉が、重々しく壁一面を塞いでいた。
「勿体ぶりやがって……」
 忍び寄って、騎士の剣をつついてみる。すると、にび色の鎧がぎこちなく動いた。
《……名、を》
 頬当ての奥から聞こえてくる声は、気が滅入るほど低い声だった。切っ先をアキラにと向けながら、緩やかに命を吹き込まれてゆく。
 ぎこちなく軋む鎧は、隣にたたずむ騎士にも伝染していった。
 盾をかざして、ぎこちなく身構える
《素性の知れぬ者、通すわけには、いかぬ》
「なんだと? 素性って、俺は」
《───名を申せ!》


第六章(4)に続く。


うわー。。。

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