本の話や宇宙の謎、猫の神秘、自作小説など、目についたものをなんでも盛り込むブログ。

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第五章(3)


“後継者”の定義は、『黄金色の力を受け継ぐ者』である。これは〈森〉のシステムが整ったときに出来たらしい。つまり、黄金色を持つ者が統率者として即位し、それに続く者もまた同じ力を有して生まれてくることを指す。
 統率者を遡ってゆけば、その源はガムシャナに繋がっていた。
〈森〉を確固とした異世界にするために、ガムシャナは『死』ぬことを拒否して地下に潜ったと言われている。平和と安定を願う核であり〈森〉の意志でもあるのだ。
 従って、今現在でも命ある存在である。
 それは真実だった。なぜなら、後継者は一度、ガムシャナに会わなければならないからだ。理由は明らかにされていないが、面会すると『正式な後継者』として認められることになる。蝙蝠の一族のなかでも、このことを知っているのは常に統率者と後継者だけであり、最大級の極秘事項だった。
 アキラが人間界に飛び出したきっかけは、これだった。ガムシャナの住まう地下に、降りてゆくことを促されたのだ。そんなことをすれば後戻りできなくなる、統率者になるのだけは真っ平御免と思っていただけに、反発は必然だった。
 結局は統皇が折れる形になったが、保留にしただけで諦めたわけではなかったらしい。実質的には、アキラが後継者である事に変わりはないのだ。
『地下に行きなさい』という一文は、〈森〉にとって神にも等しい存在が、蛭子及び鵺の問題を解決する糸口になると示唆し、ついでに念願の『正式な後継者』にさせることを意味していた。
「したたかな中年め! くそったれが!」
 口の中で罵りながら、アキラはカリーファと鵺を引き連れて建物を出る。
 すると、振り返ったカリーファが声を上げた。
「あれえ? ここって、随分大きいお屋敷だったんだね」
「……ああ? これは目くらましだ。実質は2LDK」
 アキラはひねた口ぶりで言い捨てる。
「というのは嘘だが、中庭だの庭園その他を含んでるからな。まあ、公民館というか……村の妖魔が集まる場所だ。正式名称は『統率者の公邸』。誰もそんな名で呼んじゃいねえけどな」
「へえー、面白いね」
「どこがだよ。別に、こんなもんだろ」
 恨みを篭めた視線を投げ掛けて、肩を聳やかした。
〈森〉の村は、屋敷の前庭を通り抜けるとすぐに見えてきた。こじんまりした家が軒を連ねて、花壇の美しさを競っている。中央に広場があって、ガムシャナが人間界から運んだと言われている大岩が、黒光りして辺りを圧していた。
 上空から見ると三本の道が交差した脇に家々が並び、丁度雪の結晶のような形をしていた。裏通りには井戸と洗濯場がひしめき、機織りの音が響いている。規模は変わろうとも生活自体はガムシャナの頃と変わっていない。
「わー、村だあ」
 カリーファは嬉しそうに声を上げた。
「ほんとに村だねえ」
 どこに感動しているのかが解らなかったので、
「ああ、村だ」
 簡単に返事をして、辺りを見回した。
「それにしても、誰もいねえな……」
 普段と違って、ひと気がないのが気になった。石畳もひっそりとして午後の陽を寂しく照り返している。
「まさか……」
 アキラは急に足早になって、増築を重ねた大きな家に向かった。カリーファと鵺を置き去りにするような勢いだった。
「待ってよお!」
 追いすがる小柄な身体は、急停止したアキラの背中にぶつかって尻餅をつく。
「あいたたた、……んもう、アキラちゃんったら───」
 文句を言いかけて、はっと口をつぐんだ。
 そこには、村中の者が集まって跪いていた。瞑目し、一心に祈りの言葉を呟いている。
 と、その内のひとりが、顔を上げて悲痛に叫んだ。
「アキラ様……!」


第五章(4)に続く。



あわあわあわ……

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