本の話や宇宙の謎、猫の神秘、自作小説など、目についたものをなんでも盛り込むブログ。

2017/051234567891011121314151617181920212223242526272829302017/07

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
第五章(1)


 ガラス天井からは黄色掛かった陽が射してきていた。
〈森〉の黎明期からの記録を保管してある蔵書室は、高さにして三、四階ほどの塔となっている。内部は円筒形で天井までの吹き抜けとなっており、丸い壁面すべてに本棚が作られていた。そのほとんどに隙間なく古めかしい本が詰まっていて満杯寸前のように見えるが、増殖し続ける冊数を限りなく受け入れ、生き物のように成長する建物なのだった。
 どの本も簡単に閲覧できるよう、スロープが天井までの道のりを確保していた。所々にはしごも用意されていて、〈森〉の住人なら誰でも利用できるようになっている。
 目が眩みそうな蔵書の数に、アキラはうんざりした目を向けた。
 この部屋に篭もってから歴史書の類を漁ってみたが、成果はほとんどない。そして、気分も重く沈んでいる。
 はしごを椅子代わりにして腰をかけると、ため息をついて両手で顔を覆った。
「俺って、馬鹿だな……」
 自分の声に、更に暗い表情になる。
「俺は相変わらず、どっちにもなれない。妖魔にも、人間にも……」
 アキラは自分に言う。傷口をつつくことで痛みがあることを確認するように。
「……アキラちゃん?」
 カリーファの声に、アキラは顔を上げて見回した。立ち上がって手すりから下を覗くと、真っ白い姿はにこやかにこちらを見上げていた。
「そっち行ってもいいー?」
「だめだ」
 にべもなく断って、付け加えた。
「もう疲れたから休む。今そこに行くから」
 手摺りを乗り越えて飛び降りる。アキラが床を震わせて着地すると、本棚が一斉にざわめいた。
「無謀だなあ。怪我するよ」
「俺がそんなへまやるかよ。天辺から飛び降りたって平気だぜ」
「またまたあ」
 何がおかしいのか、けらけらと笑った。聞くものの気勢を削ぐ明るさだった。
 アキラは軽く手をはたいて、ふと足元を見回した。
「あれ? 鵺は一緒じゃねえのか」
 常にセットのような気がしていたので、片方だけだと物足りない気がする。
 手近な本を触りながら、カリーファはにっこりした。
「部屋の外で待ってるよ。精気酔いしたみたい」
「精気酔い?」
「あ、勝手に僕が名付けたんだけど、精気にあたり過ぎたせいで気分が悪いって。四鬼獣さんたちが口輪を外そうとして気を注いでくれたんだけど、結局びくともしなくてね。キマ鵺、倒れちゃったんだ。動くのが大変みたいで、廊下で待ってるって」
 適当な方向に指を差し、
「それにしても四鬼獣さん達の精気は逞しいね。力強いというか」
 感心したふうに、頷いてみせた。
 四鬼獣とは、身体に動物を棲ませて制御している者たちだった。種の力が衰えている動物には妖魔が存在していない場合がある。それらをサポートする任を負っているのだ。
 その名の通り、四名の者が分担してあたっている。
「あいつ等でも駄目なら難しいな。〈神話〉の呪具なんて統皇じゃ手を出せねえし」
「どうして? 王さまは一番強い力を持ってるはずでしょう?」
「向き不向きがあるんだよ。方向が違うというか、質の問題だ。基本的に統率者は陽で、四鬼獣は陰だから」
「うーん、やっぱ解んない……」
 お手上げの仕草をして、あっさりと諦めた。
 もし訊かれても、感覚を説明するのは面倒なので、
「解らなくてもいいさ」
 適当に話を打ち切った。 
「言い忘れたけど、王という言い方はしないんだ。王は君臨するものだろう? 〈森〉の場合は統率者……率いる者という。簡単に統皇と呼ぶのが一般的だがな」
「あ、そうなんだ。王さまも───じゃなくて統皇さんって呼ぶんだっけ───何も言ってなかったから」
「あの人はそういう人だ。うるさいことは言わない……」
 アキラは唇を曲げて独り言のように言い、ふっとカリーファの白い頭を小突いた。
「それにしても、何か俺に用があるのかよ。暇だから遊んで欲しいのか?」
「ひどいなあ。僕、王……統皇さんから手紙を預かってきたのに」
 カリーファは頬を膨らませながら、ポケットから紙片を引っ張り出した。


第五章(2)に続く。



やっと半分……ううううう~、もう勘弁してください。

スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://kujyakudou.blog95.fc2.com/tb.php/32-6f5b8665
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。