本の話や宇宙の謎、猫の神秘、自作小説など、目についたものをなんでも盛り込むブログ。

2017/07123456789101112131415161718192021222324252627282930312017/09

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
第四章(3)


「突然に空から、ひと振りの刀が降ってきた。それは深々と岩に突き刺さって、地上にいる者の目をまばゆく貫く聖刀だった」
「へえー、刀がねえ……」
 呑気なあいづちに、「まあ、この辺が伝説っぽいとこなんだけど」と付け足して、
「ありとあらゆる生き物が、岩から引き抜こうとしたが駄目だった。人間も、動物も、動物から枝分かれした妖魔も、受け入れられなかった。だが最後にやってきた蝙蝠の妖魔、エン・ゲノム=ガムシャナが手に取ったときには、待っていたように抜けた」
「凄いね。選ばれたひとだったんだ」
「それはどうかな、ただ単に馬鹿力ってだけかも知れねえし。……いや、そんなのは置いといて、刀は意志を持っていて自らを『摂理の刀』と名乗った。ガムシャナは精神を同調させると、刀を揮って人間の世界と動物の世界を切り離した。世界を棲み分けさせたんだ」
「その動物の世界の方が〈森〉?」
「ご名答。系統の違う生き物が分かれたことによって、邪鬼は行き場をなくして地下に引き篭もり、世界は救われた」
「あれ? じゃあ神はどうなったの?」
「せっかちだな、これからすぐ出てくるよ。……ガムシャナの目には、明るい日差しが降り注ぐ地が見えた。そして、これ幸いと降臨する神の姿も」
 両手で煌めく粒子を表すように指を振ってみせる。
「『今こそ、この地は神々を迎える準備が出来た』と言いながら、華々しく降り立つのを見て、ガムシャナは大いに怒った。そして、神の世界をも切り離してしまった。『神は要らぬ』と……」
「うん、僕もきっと同じことするよ。ガムシャナさん、偉い!」
「ところが、そうはいかないんだな。摂理の刀は、ガムシャナの行動に失望して消えてしまう。『一時の激情に任せて摂理を揮うものこそ最も忌むべし』と言い残して」
「なんで!」
 身体ごとアキラに向き直って目を剥く。
「悪いのは神様じゃない? どうして刀は解ってあげないの」
「俺に訊かれても、知らねえよ……」
 勢いに押されて呟く。
「刀には刀の考えがあったんだろ。とにかく、これで〈森〉が誕生したわけだ。ついでに出来た〈神話〉とは存在の意味が違う」
「……ガムシャナさん、かわいそう」
「その話はもう終ったんだよ」
 いつのまにか立ち止まって話し込んでいたのに気が付いて、アキラはひとりと一頭を急き立てた。このままでは、朝になっても穴の中にいる羽目になりそうだったからだ。
「〈森〉が動物の死後の世界として機能し始めたのは、ガムシャナが統治して暫らく経ってからだという。その頃には人間界も落ち着きを取り戻して、自然発生的に人間の死後の世界〈混沌〉が出来た。どちらも『命の場』であり、確固としたサイクルを実現したが……〈神話〉は一度崩壊することになる」
「えー? だって、今もあるよ?」
「本当の意味での〈神話〉は死んだらしい。人間界と切り離されてから徐々に衰退が始まって、精神は消滅した。お前が見たのは神々の形骸にしかすぎない。過去の行動をなぞるようにしか生きていけず、一歩も前に進まない幻に成り果てた。そういう意味では〈童話〉と同種の世界だよな。だから、準異世界なんだ。発奮して過去から抜け出すことだって出来るのに、未だにその兆候は現われない」
「それって矛盾があるよ。精神は死んでいるんでしょう? だったら発奮しようがないと思うけど」
「存在には意義がある。元々神は精神が具現化した姿を持っているから、存在するからには精神もあるんだ。俺がさっきから『崩壊』だの『死んだ』のと言っているのは、本人たちがそう思い込んでいるからなんだよ。自分自身に縛られてる。死んだと思う精神が生きているんだ」
 カリーファに向けて言いながら、アキラは江森の言葉を思い出していた。
(あなた様の存在する意義は?)
 目の前にいるような錯覚を覚えて、頭を振って払い除けた。
「だから、〈神話〉には───〈童話〉も同じだけど───何も生み出さず、人間の想念を掠め取って維持している。もし、あいつ等が束になってかかってきても、〈森〉は小指一本で弾き返せるさ。なんたって常に新しい風が吹いている場所には、活気があるもんだからな」
 カリーファはにこやかに振り返った。
「アキラちゃんは、そこの守護者だもんね。しかも王様の後継者なんでしょ?」
「はん……! 俺は継ぐ気なんかねえよ」
 鼻息を荒くしたアキラは、はっと胸を押さえた。
「そういえば、どうして知っているんだ。俺のこと───」
「だって、向こうで教えてもらったもん。人間界に〈森〉の後継者がいるから訪ねるように、って。名前は蜜子さんから」
「あ、そう……」
 こんなとき、アキラは自分が〈森〉の公人であることを思い知らされる。統皇のことだから、アキラの名を正式な王名表に記載しているだろう。だが、どちらの名前で載せたのか……
「どうでもいいけどよ……、お前はなんで、俺を『ちゃん』付けするんだよ?」
「えー? 別に、意味なんてないよ。呼び捨てだと失礼だし、『アキラさん』は言いにくいし」
「ああ、その程度なわけね」
 ため息が出そうなのをこらえた。
「最高に格好悪いから、何か理由でもあるのかと思った」
「厭なの? じゃあどう呼べばいい?」
「そうだな、『僕の天使様』とか、『古今無双のいい男』なんてのが妥当かな」
「それ、絶対変だと思うよ」
 むっとした顔をすると、
《おい、蝙蝠》
 こちらはこちらで勝手な呼び名を使っている。
《向こうが明るくなってきた。出口か?》
「また入り口だったら面白いけどな。あいにく出口だ」
「随分長かったねえ」
 カリーファは吐息混じりに言った。
「あともうひと踏張りだよ」
「さて、それはどうかな?」
 ニッと笑ってみせると、カリーファの肩を掴んで二、三歩あるくのを手伝ってやる。すると、いきなりに視界が開けて───。
「わあっ! そ、外に出てる!」
 明るい日差しが降り注ぎ、幹も葉も黒い樹で出来た〈森〉にふたりと一頭は立っていた。ちょうど見晴らしのいい丘に、穴は繋がっていたらしい。
 周りを見回してカリーファは呟いた。
「これって……」
「『想念の場』とは、こういうことなんだよ。道はあってないようなもの、距離も同じくそれぞれの感じ方によって違う。もちろん〈森〉には地図なんかない、流動的で大まかな地形を持つ、動物にとっては何年いても飽きない場所だ」
《ここは、気候が温暖なのか? 快適だが》
 鵺は、丘からふもとへと吹く風に目を細めた。微かに花のかおりがする。
「それぞれの感じ方によって違うと言ったろう? 自分が一番過ごしやすい温度に感じるように出来ている。この前、白くまの妖魔に訊いたら『涼しくて気持ちがいい』と言ってたぜ」
《……楽園、なのだな》
「そうだ。動物と妖魔で作り上げる、理想の世界だ」
「理想の、世界」
 カリーファは両手を広げて空を仰いだ。樹々の天蓋が途切れているので、深みのある青空がどこまでも広がっている。
 銀色の飛行物が尾を引いて横切っていくのは、遥か上空を巡回している看管鏡だった。人間ほどの大きさをしている鏡は、その体に〈森〉をあまねく映して管理に利用されている。ある意味、悲しい存在であるが……太陽の光を受けて輝く様は美しかった。
「すてきだね。とても不思議で、でも安定した雰囲気に包まれているよ」
「歴史始まって以来、数々の苦労の末にここまで仕上げたらしいからな。実は俺も、案外居心地がいい場所だと思っている」
「だったら、どうして人間界に住んでいるの?」
「忘れたくないから、かな……」
 口からこぼれた言葉に自分でも驚いて、カリーファを小突いた。
「なんてこと言わせるんだよ。さあ、もう行くぞ!」
「どこへ?」
「お前、〈森〉に来た目的を忘れてないか? 取り敢えず、統皇に会う」


第四章(4)に続く。



ギルガメッシュの…パク…リ…。。。どたっ(卒倒)
スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://kujyakudou.blog95.fc2.com/tb.php/26-0ea0baf0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。