本の話や宇宙の謎、猫の神秘、自作小説など、目についたものをなんでも盛り込むブログ。

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友人や知り合いなどと話をしていて、ふと、
「私ってもしかすると、皆さんと笑いのツボがズレてるのかも……」
と思う時があります。

家族でテレビを見ているときも、私だけ笑っている時がある。そういう時は、お笑い芸人のギャグやエンターテイメント番組などではなくて、何の変哲もないニュースだったりします。キャスターがコメンテーターに、
「〇〇さん、この問題をどう思われますか」
などと言うと、名指しされた人は 「待ってました」 とばかりに身を乗り出してしゃべり始めたりする。その予定調和がなぜか笑える、という周囲には理解されないツボを持っているようです。

この動画も 「私の笑いのツボ」 がパワー全開炸裂した動画です。

早速見ていただきましょう。某NHK教育テレビ 「みんなのうた」 で放映された歌です。


かなり音が出ます! お気を付けください!

サバクサバイバル






【私の突っ込み】
・ ラクダにはなりたくない。
・ 「なればいいのだ」 と断言するな。
・ 「びっしり耳毛」 もいやだ。
・ 鼻の穴から湯気出すな。
・ 変なダンスやめてください。
・ ラクダになったとしても何の解決にもなっていない。
・ やっぱりラクダになるのはいやだ。
・ 副題が 「人類ラクダ化計画」 って……


「あ~楽だ楽だ♪」 っていうのは大歓迎ですけどねえ……


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なんとなく更新するネタもないまま4日が過ぎ、気が付くともうすぐ11月になろうかという時期に来ています。
寒くなりましたねえ……
私は暑いのと寒いのが苦手で、ぬるまったいのとか薄ら笑いとかも苦手です。まあ好きな人はいないだろうとは思いますが。

それはそうと、ずっとアップしていた小説がようやく終わりました。最後に ‹了› と書いた時には、肩から重荷が下りたような気がしたものです。誰も読んでいないであろう小説ですが、私にとっては思い入れの深い作品でして、ネットの海に放てたことが嬉しいような寂しいような……少し変な気分でした。

実はこの小説、シリーズでいっぱい書いちゃってます。
そして当小説は、順番でいえばシリーズ最後の作品だったりします。

最初から説明させていただくと、10年以上前に 『‹森›に棲む者』 というタイトルの小説を書きました。主人公は同じで、登場人物もほぼ同じという体たらく。 恐ろしいことに原稿用紙600枚以上もある資源の無駄遣い超長編なのです。
内容は、主人公が危機に見舞われてバタバタと走り回り、裏切りに心を痛め、世界の崩壊を前に究極の選択を迫られるというもの。なんと主人公は恋までするのです。一体何が書きたかったんでしょう、私ってば……

その中にも 「カリーファ」 (当小説の登場人物)が出てきて、主人公の唯一といっていい友達、という設定なのですが、カリーファと主人公が友達になったいきさつを書いた小説が、当小説なのです。
時間設定は、当小説は 『‹森›に棲む者』 (仮に「本編」と呼びます) よりも半年前、冬から春になる時期の話です。まだのんきにバタバタやっている、楽しい時代というつもりで書きました。なにしろ本編がシリアス一辺倒なので、ガラッと変えて気楽な雰囲気を書きたかったんですね。

当小説の中に 「エンゲ=ノム・ガムシャナ」 という登場人物が出て来ますが、この人を主人公とした長編なんかも書いちゃってます。 またまたグッタリすることに350枚ほどの超だらだら小説です。

恐怖はまだ続きます。
本編に出てくる登場人物で、かなりスカした悪役風の男が出てくるんですけど、そいつの過去を書いた小説も書いてしまってあるんです。これは男同士の友愛がテーマ、というキワモノなので絶対に公表できない作品になってしまいました。

当小説の主人公を書いた短編もいっぱい書いてます。
過去の生い立ちを書いたもの、それと本編から一ヶ月後のもの、カオスものまで書いてまして、もう何が何だか解らない状態に突入しております。

まず初めに本編があって、そこからキャラクターやら時間などが枝分かれして大量の小説が生まれました。
私の妄想が形になる、という楽しい作業だったのですが、やはりひとり遊びの域から脱していなかったんだなあ……と思えてなりません。
書いた本人の私ですら、「いや、その展開なんなのよ?」 と突っ込みを入れたくなるほどのご都合主義的ストーリーだったりするので……

今回はネットで小説をアップするということが、思いのほか大変だということも分かりました。読んでもらえるための工夫とか、集客アップで読者を増やす、なども色々考えたのですが、結局は何もすることなく終わってしまいました。無理に読んでもらえなくてもいいし、私の独りよがり小説なのだからネットの海でもポツンと浮かんでいる状態でもいい。不思議とそう思える自分がいました。

でも。

もし私の小説を最後まで読んでくれた方がいたら、非常に嬉しいです。お知らせくだされば漏れなく私の投げキッスを進呈……

えっ? いりませんか? しかもそれ前のブログからの使い回し? これはまた失礼しました。

もう長編小説をアップすることはありませんが、このブログは私のどうでもいい独り言などを書く場として今後も続いていきます。
更新は少なくなると思いますが、どうぞよろしくお付き合いくださいませ。



ついまたランキング貼っちゃうの。てへっ。

第九章 エピローグ(後)



『やあ、アキラちゃん元気いー? 僕はとっても元気だよ。
 あれから村のみんなと仲直りして、一緒に花壇の手入れをしたりして過ごしているよ。
 ねえ、色々話したいことがあるから、近いうちに来てくれないかなあ? みんなもアキラちゃんが怒ってるんじゃないかと不安になってるみたい。手作りのお菓子が食べたいなーって、伝えてくれって頼まれちゃった。オリジナルのケーキを誉めれば機嫌が直るから、だってさ。みんなして、今回は我慢して食べようって言ってるよ。
 あ、そんなことまで言わなくていい? ごめんごめん、でももう言っちゃった。
 とにかく、僕もアキラちゃんに会いたいし、そのケーキ食べてみたいんだよ。なんでも“ほぼ嫌がらせに近い”って味がするんだって?
 んん? どうして僕の身体を羽交い締めにするの、狸さん? 
 あん、ひっぱらないでよ。
 きゃん! どうして蹴飛ばのさ? けっこう乱暴だよね。
 え、何? もういい? ちょっと待ってったら。僕まだお喋りしたいんだけど───』

 水晶の大きな塊からカリーファの平面的な姿が消え、アキラはぎこちなく振り返った。
「……で?」
 そばに立っている蜜子に訊いた。
「どうして、こんなこと言われてまで〈森〉に行かなきゃいけねえんだよ?」
「私に訊かないで頂戴」
 いつもどおり無表情に見える微笑を浮かべ、蜜子は豪華な巻き毛を掻き上げた。ブレスレットが硬質の煌めきを放つ。
「あなたと連絡を取りたいと言われたから、そのようにしたまでよ。内容までは責任持てないわ」
「そうだけどよ……」
 アキラは顔をしかめた。まったく正論ではあるが、気が治まらない。
「だったら〈森〉から接通してきても無視するように。いいか、これは命令だぞ」
「はいはい、威張りん坊さん。仰せに従いますわ」
 美貌の巫女はしんなりと一礼してみせた。こういう態度の時は、必ず正反対のことをしてやろうと企んでいるのだ。この蜜子という女は。
「……ったく、誰も彼も俺をなめやがって!」
 アキラは勢い良く立ち上がった。
「ちっくしょう! 目茶苦茶うまいやつを作って驚かせてやるからな。見てろよ!」
「それならいい方法があるわ」
 蜜子は含み笑いを洩らす。
「近所のケーキ屋で買って持っていくのよ。みんなひっくり返るわね」
「ミイみたいなこと言うなよ」
 拗ねた口ぶりで、アキラが呟いた。
 以前はこんな会話にも苛々していた。しかし、表情は目に出る───動物に教えられてから、蜜子を見る角度が変わった。無表情としか見えなかった顔には、百万言もの言葉を費やしても表現しきれない感情が潜んでいた。
 アキラは腕組みをして考え込む。
「最近インパクトのあるケーキを作りすぎたのかもしれないな。もう少しおとなしめのを考えてみるか。……とりあえず参考のために、今からどこかに行くか? ケーキの旨いレストランとかに」
「……私に言っているの?」
「他に誰がいるんだよ? 別に厭ならいいけどよ。でも女連れの方が注文しやすいんだよな」
 蜜子は見透かす目つきで、アキラの顔を覗き込み、
「意外だわ。怒っているかと思っていたのに」
 ふいに、整った顔を冷たくさせる。
「あのこと、まだ決着はついていないのよ」
「話を蒸し返すなよ。もういいだろ」
 言葉を被せるようにして、アキラは強引に話を終わらせた。
「俺なりに考慮した。二度とその事は口に出すな」
 カリーファが“未来の災厄”であるという蜜子の霊感は変わらない。それどころか徐々に強まってくるようだった。
 アキラはそれに真っ向から逆らい、『絶対に信じない』と突っぱねた。口論の末に、ふたりの間に深刻な決裂を引き起こす寸前にまでなった。
 しかし統皇の結論が、ふたりを救った。『当面はカリーファを客として滞在させる』という通告をしてきたのだ。渋々、蜜子が引き下がる形となり、仲たがいは凍結した。
「統皇様はあなたに甘すぎるわ」
「はん! 何とでも言え」
 アキラは舌を出して蜜子の表情を険しくさせ、それを見ておかしそうに笑う。
 そして、記憶の中の泣きべそに、秘かに語り掛けた。
 泣くなよ、シン。
 精一杯あがけ。戦うんだ!
 加勢するように、こぶしを手のひらに打ち付ける。その痺れる痛みは、アキラの負けん気を掻き立てて不敵な笑みを頬に押し上げた。
 今ここに江森がいたら、滑らかに言うことが出来るだろう。
 俺は『運命』って奴と、喧嘩する気でいるんだぜ、と。
「アキラ? 何を考えているの」
 蜜子が、訝しそうな顔で見詰めていた。
「怒った顔して笑わないで頂戴。気味が悪いわ」
「ほっとけ」
 簡単に応えて、肩をそびやかした。
「どうするんだよ? 行くのか行かないのか、はっきりしないと気が変わっちまうぜ?」
「行くわ。あなたの奢りで、散々高価いのを注文してやるから」
「全部食えよ。……じゃ、話は決まった」
 手を差し出して、腰を屈めた。
「インチキ占い師、お手をどうぞ」
「あら、ありがとう。その生意気な舌を引っこ抜いてくれたらもっと気分がいいのだけど」
 ふたりは険のある目を見交わして、さっと逸らした。今は一時休戦と言う代わりに。
「ああ、そうそう───」
 蜜子はテーブルの端に置いてあった、なにやら細かい文字で書いてあるメモを取った。
「統皇様から伝言よ」
「あん? 何だって」
「〈森〉の樹を二、三本折ったそうね。反省文を書くように、って」
「げっ!」
「それと……」
「まだあるのかよ!」
「ええ。村を騒乱させた件、蔵書室の本を読み散らした件でも一言注意したいから顔を出しなさいと仰ってたわ。あと、あれから犬と猫があなたを捜して屋敷の花壇を壊したんですって。四鬼獣様からも、苦情が……」
 アキラは茫然として、文句を言う元気も出なかった。
「まだまだ沢山あるわよ」
 楽しそうに読み上げながら、蜜子はアキラの背中を押した。
「ケーキを食べながらゆっくり説明するわね。……今日はなんだか、とびきり美味しく頂けそうだわ」
 急に力が抜けて、アキラはへたり込みそうになる。
 どうやら『運命』と戦う前に、この山積みの雑事を片付けるだけで力尽きてしまいそうだった。
 向こう見ずで脳天気な蝙蝠は───『水の月』を追い掛ける旅に、とりあえず心の中でだけ一歩踏み出した。



       <了>






完結しました! 最後までアップできてよかった~!
皆様に感謝します! ありがとうございましたん♪

第九章 エピローグ(前)



 ガラスの嵌ったドアを細めに開けると、アキラは喫茶店の中に顔だけ入れてのぞいてみる。
 その微かな音に、モップで床を掃いていた江森が振り返った。
「おかえりなさい」
 口調は穏やかだが、待ち構えていたという雰囲気を漂わせている。
 アキラはにっと笑ってみせた。
「あれ、ドギーとミイは? 掃除しておけって書き置きしておいたんだが」
「さあ? 私が戻ってきたときには箒で殴り合っていましたよ」
 肩を竦めると、「それよりも」と言って腰に両手を当て、アキラをひと睨みする。
「兎族の件で悶着があったそうですな。先程〈森〉から連絡が来て……」
「ああ、それなら解決した」
 せっかちに言葉を遮り、得意そうに鼻を蠢かす。腕に抱いていたものを見せびらかすように差し出した。
「蛭子が、ちゃんとした仔に化けた。これなら村の奴らも文句ないだろう?」
「……えっ?」
 江森は戸惑い顔で首をかしげる。
「その赤子が、何か……」
「例の仔だよ」
「人間の、ですか?」
「兎族の、だよ! よく見ろ、これは……」
 嫌味たらしく掲げてみせると、肌色の皮膚がだらりと垂れ下る。
「あれ?」
 手に持っていたアキラの方が、頓狂な声を上げて自分の持っている身体を見直した。
 そこには、丸々とはち切れんばかりの、人間の赤ん坊がいた。
「どうしてだ? さっきまで、確かに……」
 どこかですり替わったのか、まさか今までのは夢だったのか───と、声に出さなくても顔に全部書いてある。
 片目が血の色をした男は、柔らかく微笑んだ。
「ちょっと抱かせてもらえますか?」
 頭のうえに疑問符をたくさん浮かべたアキラが手渡すと、江森は意外にも慣れた手つきであやし始める。
 大柄な江森に抱かれて、赤ん坊は手を打って喜び───寝返りを打った瞬間、兎の毛皮に覆われた。
「えっ? こいつ今、変幻した?」
「そのようです」
 驚きもせずに言って、アキラの腕に返してやる。
「ようやく、妖魔の願いを体現する者が現われたということでしょうね」
「妖魔の願い?」
「そうです。我々が人間と同じ身体をしているのは、かけ離れてしまって断絶する系統種、動物と人間を繋ぐ意味を持っています。しかし、まだ目に見える形での関係性を持たせられるまでに至っていません。もっと強力に絆を深めたいという願いがあります。現在の統皇は精力的に、新たな妖魔の出現を模索していました」
「じゃ、歪みがあるとか言われているのは」
「統皇はくどくどしく説明される方ではありませんから、色々と誤解されている面がありますね。あの方は即位されてから、安定のみではなく変化をも求めました。今までどおりの人間型や月見のような動物型、そしてこの兎族の仔のように新しい型───多様な妖魔がいて、〈森〉の祈りは更に完成させることができるという考えを実践されてきました……」
「多様な妖魔、か」
 アキラは頭をくらくらさせながら、腕のなかの仔兎に目を細める。
 次の世代を担う者は、幼い目をいっぱいに開いて見詰めている。
 人間と動物の未来を。希望を───
「よし、俺が名前を付けてやる。兎族は“月”を入れるのが一般的みたいだから……よし、『水月』と名付けよう」
「また、そんなことを勝手に決めて……」
 江森はため息を吐きながら、モップの柄に顎を乗せた。
「でも、良い名です。由来はあるのですか?」
「もちろん」
 得意そうに指を立てて見せた。
「『隠れ現れ 陽炎稲妻水の月 手にもたまらず防がるる』……捕らえどころのないもの、追い掛けても捕まえられない物のことだ。変幻するような奴には丁度いいだろ」
 ふたりが仔を覗き込むと、ふさふさの耳を交互に動かして遊んでいた。
「長老の月影が喜ぶでしょう。早くつれて行ってあげたほうが」
「お、そうだな。じゃあ行ってくらあ」
 アキラは丁寧に仔を抱き直すと、不意にニヤリと笑う。
「あいつ等、どんな顔するかな。俺らを追っ掛け回した挙げ句に見失って、かなり頭に血が昇ってたから……少しは骨のあるところを見せて、文句のひとつも言ってくるなら赦してやる。土下座なんかして平謝りの態度だったら、うなされるほど怒りまくってやるぜ───」
 くふふ、と厭な声を洩らして、ドアを開けた。その楽しそうな様子に、どちらを望んでいるのかが知れる。
 江森はため息をついて、義務的に声をかけた。
「アキラ様。あの、お手柔らかにお願いしますよ?」
「解ってらい。うっせえな」
 得意のきつい目で睨んで出ていきかけたが、
「あのよ、江森」
 アキラは身体を半分外に出したまま、呟く。
「俺、これからは門を開ける仕事、厭がらずにやるよ」
「はあ……」
 江森は首をかしげ、曖昧な返事をした。
「それはどういった心境の変化で?」
「今日一日で、その、色々あって」
「『色々』ですか」
「そうだ。それ以上は聞くな」
 早口で言って、警戒の目つきで言い添える。
「だからって、全て納得したわけじゃねえぞ。あくまでも門を開けるってことだけだ。解ったな?」
「はあ、そうですか」
 江森は弱い返事をして、苦笑を浮かべた。
「私にとっては、あなた様こそが『水の月』ですね」
「俺が?」
「そうです。悩んでいると思ったら、いつのまにかすっきりしたお顔で『あれはもう済んだ』とおっしゃる。……捕えきれないお方です」
「ばかだな」
 アキラは緑掛かった目を細めた。
「俺は『水の月』ではない。それを追い掛ける側だ。手に入れようとして、あがいて、悩んでる。───だから……」
 アキラは言葉を切ると、頭を振って苛つく目を江森に向けた。自分の気持ちを言葉で表すことが、時々ひどく下手になるときがある。
 照れくさいことを言おうとしているときは、特に。
「っつうか、別になんでもねえよ!」
 アキラは、いきなりドアを蹴飛ばした。腕の中で温和しくしていた仔が、驚いて鳴き声を上げる。
 舌打ちすると、江森に指を突き付けた。
「もう掃除なんかいいから、家へ帰れ!」
「解りました……」
 江森の笑いをかみ殺した顔にぶつける勢いで、店のガラス扉を閉めた。
 深夜の住宅街は、家々が黒く塗り潰されている。しめやかな空気にさえ八つ当りするように、アキラは〈森〉に通じる神社まで走って行った。



第九章 エピローグ(後)に続く。



ああ……次で完結です。もう解放されるのですね。よかった……

第八章(7)


《この者も役目が終わった。約定どおり無傷でこの者を返そう》
 うやうやしく蛭子を差し出す。
 手を延ばして毛玉を受け取ると、アキラはしっかりと抱き締めた。気配は安定していて、柔らかい眠りの中にいるようだった。
「良かった……」
 息を吐いた時、それがくすぐったいのか身動きをした。寝返りを打って、毛皮をもぞもぞさせる。
 一部が盛り上がったと思った途端、兎の耳が飛び出した。
「えっ───?」
 白とピンクの耳は音を探って震え、安心したというように、顔も出てきた。
「えええっ!」
 今まではかくれんぼをしていました、と言いたそうに、埋もれていた手足が伸ばされ、仔兎は大きなあくびをした。喉の奥まで見えるような大きい口には、もう小さな歯も生えていた。
「かっわいい!」
 覗き込んだカリーファが、アキラの腕からもぎ取って頬摺りする。反対にアキラは、固まっていた。
「これ───こいつは」
《『鍵』としての形態は必要なくなったゆえ》
 精霊の説明は簡潔だった。そして、充分過ぎるほどでもある。
 原因を解き放てば、事態は一気に終息する。───ガムシャナの言ったとおりだった。
 どこか苦々しく思いながら、アキラは精霊を見詰めた。
「ってことは、お前も」
《そうだ。澱みに戻るときがきた》
 楽しげだったカリーファの身体が強張った。ぎこちなく振り向いて、縋り付くような目をする。
「行っちゃうの?」
《そうだ》
「また会える?」
《二度と会うことはない》
 にべもない返事に、何がおかしいのかカリーファはくすくす笑った。目から大粒の涙をこぼしながら、笑っていた。
「僕ね、本当は行かないでって言いたいんだ。ずっと一緒だったから───傍にいて、言葉は解らなくとも気持ちは通じていたから、身体の半分がなくなっちゃうのと同じくらい寂しいんだ。でも、だめなんだよね? 見送らなくちゃいけないよね?」
《白き御子よ、できれば泣かずに見送ってくれ》
 困ったようにカリーファの髪を撫でる。
《我は御身と共にいて楽しかった。礼を言うぞ》
「僕もだよ。キマ───ううん、もうキマ鵺じゃないんだよね」
 カリーファの言葉に、精霊は気品のある微笑みを見せた。
《……我のことは〈番人〉と呼べ》
「ば、んにん?」
《我は〈神話〉と〈童話〉を繋ぐ澱みを統治する。互いの世界に行き来できないようにするのだ。準異世界にとっては必要な処置だ》
 アキラは、ふと、
「必要って、どういうことだ?」
 と割り込んだ。
「変わりつつある、と受け取っていいのか?」
《そうだ》
 首肯いて、精霊は丁寧に一礼した。それが別れの挨拶であると解ったのは、輪郭をぼやけさせて精気の塊に姿を変えてからだった。
《我は準異世界を成長させる起爆剤となる。……友よ。御身らふたりをそう呼ぼう。我は切に請う。我の成功を信じてくれることを》
 ふわりと浮き上がり、精霊は長く尾を引いて上空に駈け上がった。その姿は、〈神話〉と〈童話〉双方の者達に畏敬の念を抱かせる、竜の姿をしていた。
「信じるよ───」
 カリーファが叫んだ。
「俺もだ。頑張れよ!」
 負けずにアキラも声を張り上げる。
 遥か上の方で、最後の印としてきらりと光った。聞こえたという合図だったのかもしれない。
〈番人〉はこうして、本来あるべき場所に帰っていった。
「みんな行っちゃったね」
 カリーファは抱いている仔兎に顔を埋めた。
「残ったの、お前だけになっちゃった」
「おい、まだこいつが残ってるぜ」
 白い鳥を掴んで、アキラは笑ってみせた。
「せっかくだから一働きしてもらうか。蜜子にでも伝言して、村に報せてもらおう。あいつら完璧に怒りまくってたからな」
 とさかを触って記録させようとしたが、頭には盛り上がる肉がない。まだ伝言がしまってある証拠だった。
 舌打ちして、何の気なしに握り潰す。
 複雑に組み合わさった身体が解きほぐれ、七色の光芒がほとばしった。浮かび出た像は、やはり蜜子だった。
『……アキラ』
 黒い細身のドレスを身につけた美女は、相変わらずネックレスやブレスレットを、幾重にも巻き付けた格好で現われた。
『あなたがこの伝言を見るとは思えないし、必要ないかもしれない。ただ、私は霊感に従って一応伝える努力だけしてみるわね』
 蜜子の曖昧な表情を見るなり、アキラは伝言鳥を踏み潰そうとした。しかし次の一言で気が変わった。
『カリーファと名乗る子は、今も傍にいる?』
 思わず隣を振り返る。白い顔もこちらを見ていた。
『いても構わないからよく聞いて。あの子は単なる“災厄”じゃないのよ。未来に起こる災厄の先触れなの。私の霊感によると、〈森〉も人間界も、世界の全てが巻き込まれる大きな悲劇が訪れるわ。その一端を担っているの。───とにかく、私はこの件を統皇様に報告するから、あなたはあの子とあまり仲良くならないで。特に名前を名乗っては駄目。あなたの名前には、聖なる守護の術が掛かっているようなものなの。……まあ、あなたが自分から本当の名を明かすとは考えられないのだけれど、霊感が───』
 それ以上は聞けなかった。頑丈な短靴は伝言鳥を踏み潰し、粉々に壊していた。
「……僕、災厄なんだね」
 ぽつりと、カリーファが呟いた。どんなときでも笑っていた顔は、明るさの欠けらも見えないほど陰っている。
「アキラちゃんに、会うべきではなかったのかもしれない。迷惑、かけちゃう……」
「気にするな。あの女の予言は、あてにならねえんだ」
 頭を派手に叩いたが、突っ掛かっても来ない。
 カリーファは俯いて、白い髪で顔を隠した。
「事実だよ……」
 涙で不明瞭な声は、やっと聞き取れるぐらいに小さかった。
「僕は“未来の災厄”なんだ」
「ばか! いい加減にしないと本気で怒るぞ」
「怒ったっていいよ。だって本当のことだもの。僕はね、生まれたときからそう予言されていたんだ。災いの子、って」
「予言なんか当たるもんか」
 憮然と呟いた言葉に、少年は、
「当たるよ!」
 と、むきになって言い返した。
「僕という存在の、本当の名は……『シン』というんだ」
「シン?」
「そう。罪という意味。一族は代々この名前を受け継ぐんだ。僕の一族は罪人だから……その中でも僕は、最後の罪を犯す子なんだって。
 僕は自分の運命を知ったときから、別の名前を使うようにしてきたんだ。そうすれば逃れられる気がして。でも、だめなんだね。蜜子さんには解っちゃったんだ、僕が悪い存在だってことが。消しようもないんだね? これではっきりした。だから───僕は生きている限り、全ての人に迷惑をかけてしまうんだ。せっかく出会ったアキラちゃんにも、災いを……」
 胸に抱き締めている仔兎に、涙の雫が落ちた。水分を弾く毛皮は、朝露のように涙を転がして美しく煌めかせる。
「───違う!」
 アキラは唐突に、かぶりを振った。
「信じられることだけ信じろ! お前が災いの子なんて俺は信じない。だから、お前も信じるなよ!」
「でも……」
「うるっせえな、今から手本を見せてやる。予言なんかどれほど当てにならねえか、ってことをな! 俺の本当の名前は『晃夜』、日光に夜と書く。俺を生んだ親が付けた名前だとさ!」
 カリーファは驚きに目を丸くしてアキラを見詰めた。
「言っちゃだめだよ。蜜子さんが……」
「黙れ! よく聞けよ、人間の養親には『陽一』と名前を付けてもらった。俺が心の底から愛した人たちだ。その養親が死んで、本名が『晃夜』だと教えられた俺は、当然受け入れられなかった。……俺はずっと『陽一』だったし、自分を人間だと信じて疑わなかったから。
 しかし、俺は妖魔としての能力に目覚め、妖魔として『生』きていくしかないと解ったとき……人間のときの名前を捨てることにした。だが『晃夜』になるわけにはいかない。晃夜なんて名前は俺じゃない───だから一文字だけ取って『アキラ』と付けた。自分で自分の名を選んだ。どうだ、解ったか!」
 一気にまくしたて、息を荒くしてカリーファを睨みつける。
「こんなことは〈森〉の奴らならみんな知っていることだ。秘密でもなんでもねえ……俺の名前に重大な意味があると思い込んでるのは、蜜子だけなんだよ!
 あの女は何か、決定的に勘違いしている。俺が今の名を名乗っているのは、人間の親に真心を捧げているとか、そんなふうに。だから、あんな重大事みたいに言うんだ。俺は自分自身のためにふたつの名を捨てた。それだけなんだ。
 それに蜜子の予言はな、動物の最後を感知する能力はあるが、あとは外れまくりなんだぜ? なにしろ明日の天気さえ占えねえんだからな! 俺の生涯も視たこともあるが、ひでえぼろくそ言ってたっけ。そんなもんだよ、占いなんてのは。悪いことしか言わねえんだから……。
なあ、可能性なんて幾百通りもあるんだし、悪いことなんて信じるだけ精力の無駄ってもんだ。だったら自分が信じたいことだけ信じろ。例えば未来は変わる、という明るい可能性を。───それでも運命に流されるようだったら、抵抗するんだ。ほんの数ミリでも向きが変われば、一年後には数センチに変わってる。十年後には数メートルだ。……どうだ? 百年後には予言なんて外れてると思わないか?」
「百年後……って」
 カリーファの目尻に溜まっていた涙が、ぽろりと落ちた。
「アキラちゃんって、脳天気、だね……」
「お前には言われたくねえんだけど」
「そう? ……でも、うん。ありがと」
 短い言葉に、限りない感謝が篭もっていた。
「僕が抵抗したら、悲しむひとがいる。だから明るく楽しいふりをいつまでも続けなきゃならないと思っていたけど……、アキラちゃんみたいな考えかたもアリだよね」
「アリどころじゃない。これは真理だぜ?」
「やっぱり脳天気だ」
 無造作に袖で顔を拭うと、カリーファはにっこり笑った。薄茶色の目がやや赤みを含んでいる以外は、泣いた痕は残っていない。
「僕はずっと、自分が生きていていいのか悪いのか、解らなかったんだけど……そうだね、運命は変わるっていう可能性は考えてもみなかった。そういう考え方のできるアキラちゃんって、やっぱりいい人だよ。───ねえ、僕と友達になってくれる?」
「断る。俺は『友達』なんて生ぬるいもんはいらねえ」
「あん、酷い」
 カリーファはくすくす笑い、アキラもつられて笑いながら光の壁に歩いていった。
 なんとなくだが、簡単に出られる気がしていた。手をかざして、触れるまで歩こうと思っていたら、あっけなく外に出ていた。
 雑木林のように鬱蒼とした木立がある。すでに夜の領域に入っているせいで、ほとんどが闇に沈んでいるが、枝が騒めく音や香りで膨大な樹を感じることが出来た。
「あー! 解った」
 カリーファは手を叩いて、辺りを適当に指差した。 
「ここは、あの場所だよ! ほら、僕とキマ鵺が出てきたところ」
 妖魔の見回りを義務付けられている、パワースポットだった。
「ああ、なるほどな」
 アキラはA地区と呼んでいるが、〈森〉での通称は“運命の力”だということを思い出した。偶然の皮肉に、つい苦笑する。運命をこき下ろした場所が、“運命の力”であるとは───
「ここは見張らなきゃ駄目だ。異次元と澱みに繋がっていて、“おしら様”ともどこか重なっている。だから聖なる光じゃなくて、逞しい力に満ちているんだ……」
 目を細めて、天へと続いている光の束を見詰めた。力強く輝いているパワースポットは、相変わらずアキラを惹き付けてやまない。
 この場所のようになりたい、と思う。
 誰よりも強く、逞しくなりたい。それは同時に優しいということでもある。自分に余裕がなければ手を差し伸べることなど出来はしないのだ。
 いつか、なってみせる……と思う。
 それは誓いではない。挑戦だった。


第九章 エピローグ(前)に続く。


ああ……次からはいよいよ最終章です。今まで長かったなあ……

先日(といっても9月7日の記事なんですが)富士見ファンタジア文庫 『魔術士オーフェン』 の後日談が作者サイトにて連載中と書きましたが……

なんと、只今書籍化に向けて動き出しているらしいです!

ただ、諸問題があって、もし実現したら予約限定web販売になるようなんですね。部数もまだ決まっていないみたいですし、具体的にはまだ未定という書き方でしたが……

嬉しい。
これはもう絶対に買うしかありません。買います。この日を夢見ていました。
多少高くても、ネット予約するためにパソコンに張り付きます。

嬉しいんです。

どれだけ嬉しいかというと……






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このくらい嬉しいです!




一人祭り状態の私をお許しください。


秋田禎信公式サイト
「モツ鍋の悲願」 雑記→11月の日記→11月19日


作者さん……この企画がダメになっても恨みませんから……実現化ガンバッ!
第八章(6)


「まさか、妖魔になりたくない、と言い出すんじゃねえだろうな?」
《違います》
 一蹴して、動物の魂たちは居住まいを正した。
《どうしても、あなた様に申し上げたいことがありました》
「俺に?」
《はい》
 狼が毅然とした姿勢で、代表する。
《我々は数えきれないほどの輪廻を経てきました。好きな動物に生まれ変わり、好きな土地で、好きなだけ生を満喫して───それゆえに傷つき、命を終えて〈森〉に帰る。その繰り返しの終着点で、あなた様に出会いました。妖魔になる門を開ける、緑掛かった目をした蝙蝠は、とても哀しげだったのです》
「……」
《摂理に身を委ねることを、憂いてくれているのが解りました。かつては他者を屠る身が、肉の脱け殻になった途端に他者から屠られる身に変わる。その残酷さに心を痛めていました。……しかし、それこそが動物にとっての喜びであるのを、お教えしなければと思ったのです》
 言葉を選ぶようにして、目を閉じる。
《植物の葉を食む。弱い動物の肉を喰う。そしてより強い動物に屠られる……それは命を受け継ぐということです。人間ふうに言えばバトンリレーを延々と続けているようなもの、ですね。だからこそ懸命に狩りをして、狩られるほうは懸命に逃げる。そして命が終わったときには、今度は全てのものに命を分け与えるのです。生き物として、これほど喜ばしいことがあるでしょうか? 動物の短い生涯の目的は、回転を早くして他者と命を分け合うことです。喜びを分かち合うことです。存分に生きて、仔を成し、死んでゆくことです。その動物を統べる蝙蝠が、哀しそうな顔をしては、いけません》
 尻尾を振って、叱っているのではないと伝えていた。
《あなた様は妖魔であると同時に、人間の感覚もお持ちだ。だから余計に、このことを知らなくてはなりません。動物は死を迎えるのを恐れてはいないと。血肉が余さず還元されるのを喜んでいるのだ、と》
「そう、か───それを言いたくて、わざわざ妖魔に生まれるのを踏みとどまっていたんだな」
 アキラの胸に微妙な痛みが走った。それを隠して、明るい笑みを浮かべる。
「俺、余分なことしちまったんだな。お前たちが直談判したくなるほど思い詰めていたなんて、全然知らなかった。俺の感傷なんて邪魔だよな」
《あ、いえ、そういう意味では》
 狼は言葉に詰まって、仲間を見上げる。
《えーっと、その》
「ん? なんだ?」
《ですから、どう言えばいいのか》
 困った視線は、動物たちの間を一巡りしても行き場がなかった。精霊に目を向けるものもいたが、肩を竦められて宙を彷徨う。
 その時、不意に明るい声が響いた。
《はいはい! わたくしめの出番ですな!》
 新たな魂が螺旋を描いて降ってきた。
《遅れて参上つかまつります!》
 元気よく飛び回り、狼の隣に落ち着いた魂は、お調子者らしくお辞儀するように上下した。
「お前は、猪……かな? 今日死んだばかりの」
《そうでございますよ!》
 死んでいるとは思えないほど、張り切った精気を漂わせている。
《わたくしが皆様の気持ちを代弁できます。なにしろ何時間か前の出来事ですからな》
「へえ?」
《あなた様はしんみりしたふうに肩を落として、わたくしを見詰めていました。腕に抱いて、撫でてくださった。そう、確かに哀しんでいただくのは本意ではありません。しかし、わたくしは嬉しかった!》
 猪の言葉に、動物たちはほっとした雰囲気を持った。
《あなた様は心の中で泣いていました。目の前で死にゆくものを見て、悼んでくださいました。それが嬉しかった。摂理を喜ばしく思うのとは別に、ただ単純に嬉しかった》
《そうです》
 猿が首肯きながら言った。
《妖魔だったら持たないであろう感情が、これほどまでに私達を嬉しくさせるとは思ってもみませんでした。あなたの若さ、無分別で未完成な個性が、たまらなく愛しく……どうしてもこの気持ちを伝えたくて、留まったのです。嬉しかった、ただそれだけを》
《転生する前に、動物でいる間に伝えたかった》
《哀しみは必要ありませんが、あなたはあなたのままでいいのです》
 幾つもの真摯な瞳に見詰められ、アキラは頭を抱えた。
「そんなことを言うために、こんな遠回りをしたのかよ?」
 鵺となり、蛭子を巻き込むほど動物たちは真剣だった。それもアキラにひと言伝えたいばっかりに。
《お怒りでしょうか?》
 不安そうに狼が訊いた。
 カリーファは腕組みをして精一杯アキラを睨みつけ、不穏な言葉を吐いたら叱り付けようとしている。精霊は穏やかに成り行きを見守り、辺りを包んでいる光は静かに煌めいていた。
「降参だ……」
 アキラは呻いた。
「すごく嬉しい。本当だ」
 涙で潤みそうな目をしばたくと、咳払いして言葉を押し出した。
 動物たちは、今度は安堵した目を見交わして、笑った。
 表情のないはずの動物は、目に感情が表れる。それはそのまま妖魔にも当てはまった。喜怒も哀楽も、持っているのだ。顔全体で表現しないだけだった。
《お願いがあります》
 ワニが低頭して、黄色い目で見上げる。
《望みを果たした今、我々は〈森〉が恋しくなりました。できたらあなた様の手で、もう一度送っていただけないでしょうか?》
 アキラが首肯くと、さっそく茫とした魂に戻った。
 象も、狼も、猿や蛇も───競って光る点に姿を変え、身を寄せ合って待っていた。
 アキラの声を……!
「祝福あれ!」
 凛とした声を上げて、魂たちを強力に押し上げる。
「門を開け、迎え入れよ! この者達には資格がある!」
 混じり気なしの歓喜に身を震わせた魂たちは、上空に開いている見えない扉へと吸い込まれていった。
 動物の守護者、妖魔として生まれ変わるために。
「行っちゃったねえ……」
 ため息混じりにカリーファが呟く。
「今度はちゃんと、妖魔に生まれて来られるよね?」
「当たり前だ。そうじゃないと困る」
 アキラの目には、銀鈴姫の泉に深く沈む、幾つもの『妖魔となる核』が、先を争って大きくなっていく様子が見えるようだった。一度にたくさんの妖魔が生まれ、喜びに沸き返る〈森〉の村人たちの姿も……。
《蝙蝠》
 精霊の呼び掛けに振り向くと、いつのまにかアキラの目の前で精霊が膝を折る姿勢を取っていた。


第八章(7)に続く。



うおおおお……なんだか先が見えてきた!

第八章(5)


 霧が晴れてゆくと、ばらばらになった鵺の残骸を前にして、カリーファが力なくうずくまっていた。
 鵺の頭部はガラスのようになった瞳を上に向け、最後に見たときと同じに転がっている。張りついていた蛇のたてがみが、干からびて全て抜け落ちていた。
 動きを止めていた伝言鳥が、きょとんとして床に降り立つ。命を持たない鳥は、自分を運んでいた者が「物体」になってしまったのを不思議に思っているようだった。
 その黒い目がついと宙を見上げた。穏やかに光を放つ存在が、形を取りつつあったのだ。
「あ……」
 カリーファが喉を震わせた。
「あ───あ、あ……」
 アキラはカリーファの頭を手加減なしにぶん殴り、意味のない言葉しか言えない口を閉じさせた。
 緩慢に姿を整えた“それ”は、人間に酷似していながらも明らかに人間ではなかった。妖魔ですらない。輪郭を聖なる光に照らされた存在───森羅万象に通ずると言われる精霊がそこにいた。
 武人のようないでたちに柔和な微笑みを浮かべ、口を開けて見入っているふたりに深々と一礼する。
《無事まみえる喜びは、百万の言葉にも尽くしがたい。我は今、ここに本来の姿を取り戻した》
「本来の姿───って、どういうことなんだ? 説明してくれ」
 うろたえるアキラをよそに、精霊は嬉しそうな笑みを見せると、すんなりと伸びた腕を大きく広げた。
 鵺の体だったものはふわりと浮いて、従順に腕の中へと掻き集められていく。精霊がいとおしそうに抱えると、鵺の断片はきらきらした輝きを放ってこぼれ落ちた。
《因あれば、果あり。我は因を入れる『箱』としての役割をはたした》
 床に散らばる結晶を指し示し、片手で空気を撫でる仕草をした。
《蝙蝠よ……。この者達が、お前に話があるそうだ。さあ、姿を現せ!》
 精霊の声に、結晶は一斉に身じろぎをした。それぞれが、すじ状の光を放って膨れ上がる。
 ひとつは小さく、ひとつは大きく。中くらいや桁外れ、縦長と、無分別の有様を見せた者達は、形を固まらせてアキラの前に姿を現した。
 それは肉体ではなく、魂だった。
 しかも見覚えがある。
「お前たち、ここで何やってるんだ?」
 アキラは唖然とした。
「俺が最期を看取ってやった奴ばっかりじゃねえか!」
 狼の魂が首肯いた。
 ワニもいた。象と猿、蛇。みな寄り添って縮こまっている。
「まさか、お前たちが鵺だったのか?」
 アキラは端的な特徴として現われていた動物たちを見回した。じわじわと頭に血が昇ってくる。
「俺があれだけ、『迷子になるなよ』って言ったのに!」
 動物たちは更に小さくなってうな垂れた。決まり悪そうに耳を動かしたり、尾を蠢かしたりしている。
「アキラちゃん、怒っちゃだめ」
 カリーファが腕にしがみ付いてきた。
「みんな悪気はないんだよ。だから……」
「怒ってねえよ!」
 アキラはカリーファに怒鳴りつけて───唇を尖らせて呟く。
「魂は門をくぐったはずなのに、全然生まれて来ねえし、何かあったのか、もしかして俺の責任かも、とか色々考えてて───」
《ご心配をおかけして、本当に済みません》
 ワニが、のそりと首をもたげた。
《あなた様に看取ってもらった後、我々は寄り集まって異空間を彷徨っていました。そんな時、あの方と出会ったのです》
 と、精霊を振り返る。
《澱みから生まれようとしている姿は力強かった。だから、協力をお願いしたのです。融合して、その身に宿らせてもらった。しかし少々計算違いがありました》
《融合したことによって、別の新たな性格を持ってしまいました。動物の感情を流れている孤独感……不信と猛々しさを前面に出したもの。それが、あなた様の知っている鵺です。我々の奥深くに眠っている、もうひとつの顔でした》
《そして、〈神話〉と〈童話〉の世界から駆逐されそうになり、錯乱してしまった》
 魂たちは代わるがわる重い口を開けた。
「蛭子は?」
 アキラがせっかちに挟む。
「あの兎は、どう関わってくるんだよ」
《ああ───》
 全員が目を見交わして、頷き合う。
《我々を追って、澱みにまで来てくれたのです。統皇様に看取られたときに、『迷子になっているものを見かけたら連れてくるように』と言われたとかで、律儀にも捜し回ったらしいですね。そして鵺となった私達を見つけ、正気に戻そうとしてくれましたが、駄目でした》
《あまりにも深い混迷に支配されてしまったので、彼が融合することも出来ません。そこで、自分が妖魔としての肉体を持ったら、『鍵』としての役を引き受けるからと言い残して、去っていきました》
《彼は、我々よりも大きい力を持っていたのです。先を見越していました》
《そして、漸く……あなた様もご存じの経緯で、我々は元の姿に戻ることが出来ました》
《やっと望みを果たすことが出来ます》
「望み?」
 胸騒ぎがして、眉をしかめた。


第八章(6)に続く。


もうすぐだ……終りが、見えてきそう……

北関東は昨日に引き続き、ぽっかぽかの陽気になりました。あらマアお洗濯ものがよく乾くわあ~などと気楽な声を上げながら更新しております孔雀堂25歳。ええすいませんわたくし許されないウソをつきました。伏してお詫び申し上げます。

さて、金曜日にもなると疲れが出てきますね。

ここらでリフレッシュしてみましょう。とっておきの癒し動画を見つけてまいりました。



かなり音が出ます! ご注意ください!

ぬこだんご大家族






ふっ……だんごと猫は直接関係ないんですけどねえ。まあヨシとしてください。


ぬこー

私の朝は早いです。

まあ普通の早さというか、新聞が配られた後に起きるので褒められる時間ではないのですが、たいがいは5時頃に起きて家事をします。

寝室は二階なのでねぼけまなこで階段を降り、リビングに到着。
それから部屋の電気をつけて、エアコンの暖房を入れ、それからホットカーペットの電気を入れてから、天気予報を見るためにテレビをつけます。

そして、おもむろにお米をとぎ始めます。
右手を使って、ぎゅっぎゅっときれいに研ぎましょう。少し多めにお水を入れて、炊飯ジャーの「炊飯」 ボタンを押します。

おっと、ポットのお湯を沸かさなければなりません。これもスイッチオン。

さあ、少しだけ時間ができました。
お米が炊けるまで、パソコンでもいたしましょう。

パソコンの電源をポチっと押した……その時。


ブシュウウウゥゥゥゥンッ!


ブレーカーが落ちました!


リビングは真っ暗。
猫は 「フギャアア!」 と泣き、シュンシュン言い始めていた炊飯ジャーは不気味に停止しました。ポットも黙りこくって暗闇に沈んでいます。

私は。

ボーゼンと2分ほど座り続け……

よたよたとブレーカーを上げに行ったのでした。


皆さん! 今の時期は電気の使い過ぎに注意しましょう!



ああ……電子に怒られる~~~!


第八章(4)



 暫し茫然としていたアキラは、カリーファが激しく咳き込む音で我に返った。
「大丈夫か?」
 と言ってから、はっと辺りを見回す。
 逞しい力が満ちている中は、“おしら様”とは別の場所だった。乾いた空気そのものが光を発し、なにやら異空間のようになじみのない心許なさに襲われる。肉の身体を透過する光には、飄々たる力があった。
「アキラちゃん……」
 カリーファが涙目で息を荒くしている。
「僕、すっごく苦しいんだけど───どうしてかな」
「さあな」
 アキラは立ち眩みを起こしながらも身体を伸ばした。水を含んだ全身から雫が垂れ、革の短靴が湿った音を立てる。
 ひたひたと歩み寄る気配に振り向くと、子牛ほどの大きさもある生き物がいた。頭の上にはしつこく白い鳥を乗せている。
「キマ鵺」
 カリーファが駆け寄ろうとするのを、アキラは手で制した。
 何かが起こる。
 鵺の空虚な目を見て、そう感じた。
 何かが起こる。
 何かが。
《こ、うもり───》
 壊れた機械のように呟くと、獅子の頭は、唐突に身体からもげて転がった。
「キマ!」
 カリーファの叫びが空間に響き渡る。
 風化した建物のように、鵺の前脚が自重を支えきれずに崩れ折れる。胴体がつんのめるように倒れ、後ろ足にもひびが入って砕け落ちた。ごつ、と重い音がして、猿の毛皮をした胴はふたつに割れる。
 そしてそこから、凄まじい勢いで何かの気配が噴き出してきた。不定形の雲のようなものは、アキラが見たこともない生き物だった。
 瞬く間に大きく広がり、怒号を上げてのたうち回る。アキラの隣でカリーファが悲鳴を上げた。
 その声に引き寄せられるように、生き物は弾性に富んだ腕を振り回してきた。
「危ない!」
 アキラはカリーファの体を突き飛ばし、ついでに思い切り蹴飛ばしておく。
「きゃん!」
「もっと離れていろ! あの生き物は……錯乱している!」
 隆起しただけの頭に目鼻はなく、絶えずうごめきながら絶叫とも取れる声を張り上げている。アキラとカリーファが息を殺していると、目標を捕捉できずにもがき苦しみ出した。異空間の場所に全身を打ち付け、体の内側から別のものが暴れているのを押さえ込むように床を転がった。背中を大きく反って吠え声を上げ、形を変えて自らを攻撃する。
「どうすりゃいいってんだ……」
 アキラは呟いた。
「俺に何ができる……?」
 言葉が通じる状態ではないのは瞭然だった。もがいて暴れ回り、生き物自体も何がやりたいのか分かっていないようにも見えた。
 ただ、苦しんでいる。
 それに対して、アキラはどう手を出してやればいいのか見当もつかない。
「どうすれば───」
 アキラは胸が痛くなり、祈りを捧げる時のように跪いた。すると、自分の意志とは関係なく、体が勝手に蝙蝠の皮膜を現出させた。
「───な、なに……?」
 戸惑うアキラの心を置き去りにして、黒い皮膜は力強く羽ばたいた。硬い空気を掻いて、暴れる生き物を見下ろせる位置まで一息に上昇する。
 そのとき、半透明の人物がアキラの中から出てきた。それは若い頃の統皇だった。邪気の層で一体になったまま、今まで共にいたのだった。
 再び別の存在になった若き統皇は、緑がかった瞳をきらめかせて真っ直ぐに生き物へと舞い降りてゆく。続いてかつて後継者だった者たちは、アキラの体に重なったときとは逆の順序で分離していった。それぞれが使命を遂行する喜びに満ちた表情で、もがき苦しんでいる生き物を囲んでゆく。
 最後のひとりが体から出て行った。後継者たちは待っている様子でアキラを見上げている。
「なんだよ、俺もそっちに行くのかよ……?」
 返事を待ったわけではないが、ひとりひとりの顔を順に見ていくと、若い頃の統皇だけがしっかりと頷いた。
 アキラは空中で皮膜を空打ちして見せ、きりもみする勢いで急降下した。床に激突する寸前で激しくはばたき、ふわりと浮かびあがる。実体のない者たちは、そんなアキラに親愛の目を向けて、隙間の開いている辺りを指し示した。
 生き物の叫びは、耳を聾するほどの圧迫感で響き渡っていた。その声は悲痛でもあった。アキラは示された位置に浮かんで、不気味にうごめく体に触れてみえる。雲よりも弾力があり、ほんの少し温かみがあった。
「落ち着け……」
 アキラは囁いた。
「俺はお前を楽にしてやりたいだけなんだ……」
 後継者たちはアキラを手助けするように、微かな祈りの声を上げた。幾つもの時代がかった言葉が合わさり、異空間の場所いっぱいに清らかなものがあふれていく。
 そこには妖魔であるとか後継者であるとか、育った年代や場所などは関係なかった。ただ、祈る心で繋がった者たちの声が満ち、生き物を包み込んだ。
 生き物は驚きに体をこわばらせる。
 祈りの唱和が染み透ってくるにつれ、まるで共鳴を起こしているように細かく震え始めた。
「頼む……」
 アキラの呟きに、生き物は恐怖に満ちた絶叫を上げた。次の瞬間、巨大な体が音もなく崩れ落ちた。
 雲のような微実体は、粒子が分解していくように空気に溶け込んでゆく。霧となって異空間の場所を白く染め、その中をかつての後継者たちがアキラに微笑みかけていた。成功を祝う表情を浮かべ、満足そうに次々と消えてゆく。
 後には現在の後継者───アキラだけが残された。
 どこか名残惜しそうな目をして、姿が溶けていった辺りを見つめると、
「……感謝する」
 アキラはぽつりと言った。


第八章(5)に続く。




うわあああああああー(ごろごろ) ひえええええええ(ごろごろ)






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          『 そういえば


                 最近読んでないなぁ……


                        「美味しんぼ」 』






さっぱりとしていながら、お口の中でまったりととろけて後口がさわやかな……それでいてふんわりと鼻腔をくすぐる馥郁たる香り。 噛むと同時に豊かな味がじゅっと舌の上に落ちてきて……このアンパンを作ったのはジャムおじさん …… ジャムおじさんだなっ?!



海原雄山がいい人だったなんて……!

しばらく前から、「朝バナナダイエット」 が大流行していますね。
スーパーなどの店先からバナナが姿を消すという、新し物好きの日本人を端的にあらわした現象が起こりました。
果物売り場では、品出しをするそばから主婦がバナナに殺到するすさまじさ。 私は呆れつつも、その情熱に深い感銘を受けたものです。

その時、私の手にもしっかりとバナナ二房が握られていたわけなんですが。

しかし、私の場合は 「朝バナナダイエット」 が目的でバナナを買い求めたわけではありません。家族が大のバナナ好きなので、仕方なく品薄状態のバナナを探して歩いていただけなんです。 本当です、信じて下さい。

しかしまあ、私も密かにダイエッターであるからには、しっかりとダイエットに精を出しています。
その一日を記録してみようか、などと思ったりしました。


【 朝 】
たいがいは5時頃起床して家事にいそしみます。
朝食は7時半から8時近く、軽くご飯一膳に卵焼きという簡単なメニューにしておきましょう。

おっと、忘れてはいけないのが、サプリメント。
DHCの 『ファビノール』 という、炭水化物を体内に吸収しないようにするサプリを飲んでおきます。 これを食前に一錠。
それからご飯をいただきます。

食後には洗面歯磨きなどの身だしなみを終え、着替えの時間です。
ジーンズを穿く前に、『スリムウォーク』 を装着します。
ひざ下までぐらいの長靴下で、伸縮性に富んだ薄手の生地です。足先にたまりやすい水分や血液を循環して、排出しやすくしてくれます。よし、これでむくみ対策はバッチリですね。

さあ、準備ができたところで、パソコン開始!
スリムウォークって、歩かないと効果が出ないかも、という不安はさておき。
コーヒーを飲みつつ、楽しい電脳生活へとジャンプ。



【 昼 】
フリーズしたパソコンを呆然と眺めつつ、お昼御飯です。
最近は私のパソコンも動きが鈍くなり、ストライキを敢行すること一日に二、三度。 どうやらパソコンも寒さを感じるらしく、動くのが億劫になってきたようです。 でも画面が真っ黒になるのはなんでだろう、と些細な疑問を浮かべて……あ、いや大丈夫ですよね。 ねっ? ねッ?

お昼の前に、『ファビノール』 を一錠。 もはや食事前の儀式と化してます。
それから、麺類とかを軽くいただきます。
やはり消化のいいものがダイエットには効果があるようですよね。 でも、食べやすいものだと噛む回数が減って胃に負担をかけるので、適度に歯ごたえのあるものを選びましょう。私はアルデンテのスパゲティとかをオススメします。
イタリア料理によく使われるオリーブ油は、脂肪を溶かす性質があるそうです。 だからってオリーブ油のラッパ飲みはいけませんよっ! 念のためご注意申し上げます。


さて、夕方ごろになると小腹が空いてきて、お菓子が欲しくなってくるのは必然。 ぐっと我慢してもいいんですけど、空腹のままパソコンをすると注意力が低下してきます。 うっかりとクリック詐欺等にひっかからないために、ここはカロリー控えめのオヤツをいただきましょう。

オヤツは、ゼリーとかおしゃぶり昆布なんていうものがいいですね。
最近は入手困難な 『コンニャク畑』 を一押ししたいところなのですが、世知辛い世の中なのでオススメは控えさせていただきます。

あっ、書き忘れましたが、午後はトイレが近くなるように紅茶を淹れて飲んでいます。利尿作用がありますね、紅茶には。




【 夜 】
待ちに待った夜がやってきました。
まずはビールでガツンと喉を潤して、それから焼酎やウイスキーなどの美味しい液体をいただきましょう。
つまみは野菜中心のものが理想ですが、やっぱりビールにはウインナー&ポテトチップス、焼酎には焼き魚とか焼肉などを食べたいものです。 カロリーの低い鶏肉を選ぶと、ダイエットを意識してるな、という満足感があって自分を赦せる気分になります。

まあ程々にお酒を止め、夕食にいたしましょう。
さんざんつまみを食べたので、あまりお腹が空いていません。 ここは無理せずにお茶漬けなどでシメると胃に負担がかからないでしょう。 たぶん……

すっかりとご機嫌になり、食前に 『ファビノール』 を飲むのを忘れる、という事故が発生しました。 慌てず騒がず、急いで今からサプリを飲むのです! さあ、はしはし動きなさい私の手と口。


しばらく休んでから、お化粧を落とすとかお風呂に入るとかの 「生きていく上でのルーティンワーク」 を済ませ、夜も9時になったので就寝の準備です。
まずは便秘予防として食物繊維(粉)を飲み、寝巻きに着替えます。
私の寝巻きは、『 寝ている間に下半身が細くなるスパッツ』 という、薬屋さんで衝動買いしたスパッツです。どうやら特殊な織りで、下半身の老廃物を排出しやすくなるらしいのです。 もう一か月ぐらい穿き続けていますが、まだ効果は確認できていません。

布団に入ってから、まずは本屋で立ち読みした 『耳たぶまわしダイエット』 をやってみます。これは耳たぶを回して、それから顎の歪みを正すことで小顔になれるというもの。うろ覚えながら実践しています。
それと、気が向いたら美容体操などを少し。
継続はチカラなり、というステキな言葉ありますが、私には一番縁の遠い言葉だったりします。それじゃあ意味ないじゃん!



嗚呼、こんなにもダイエットしているのに、ほとんど体重が変わらないのは何故なんでしょうか。
サプリメントの飲み合わせが悪いのかっ。
それとも、『ファビノール』 を食後に飲めばいいのか。


もしどなたか、画期的なダイエット法をご存知でしたらご教授ください。
当方、食事の量とかお酒の量を控える 以外 でのダイエットを模索中です。

ぜひよろしくお願いいたします。



ダイエット……ああダイエット、ダイエット……

第八章(3)


 仄かに明るい水の中は生暖かく、体温よりも若干低めという心地よさでアキラを包んだ。
 手で掻き分けると普通の水よりも抵抗感を感じない。ただ、茫と霞んでしまっているので視界はほとんど利かなかった。
 前に泳ごうとして、はたと止まる。鵺の気配は白濁に紛れてしまっていた。
 闇雲に追おうとすれば見当違いを捜すはめになる。アキラはその場で右手方向に回転し、鵺の軌跡を捜して感覚を張り巡らせる。しかし、勝手の違う水の中は、思っていたよりも集中が途切れることを知った。
 微かな泉の揺らめきがアキラの短髪を小さくそよがせる。服が体に張り付いているのも気になって仕方がない。
 そして泉は意外と活発な精気で満ちていた。
 アキラは頭を振ってから、目を閉じて、ゆっくりと開ける。
 人差し指で唇に触れ、心の中で鵺に呼び掛けた。ほんの瞬き程度の反応でいい、鵺の思考が動けばアキラには察知できるはずだ。
 もう一度、鵺を呼んだ。
 希望を篭めたアキラの心に、
《あの者ならこの近辺にはおらぬ……》
 代わりに答えたのは銀玲姫だった。〈森〉の母たる存在は、微弱な振動として泉全体に広がっていた。水の性質がそうさせるのか、肌が触れるほど近くにいるようにも感じられる。
《一言だけだが、断りを入れる礼儀はついたな》
 銀鈴姫はくすりと笑った。
 肩をすくめると、銀鈴姫は親しみのこもった気配を伝えてきた。
《褒美として、わらわが力を貸してもよいぞ。追うのであろう?》
 感謝の気持ちを篭めて、アキラは大きく頷いた。
 周りの水がうねりを描いて凝縮してゆく。束となって渦巻き、それに引き摺られて、アキラの身体が回転を始めた。
 微かに明るいほうへ押されつつも、緩やかなターンは次第に華麗なスピンに移ってゆく。
 アキラは手と足で抵抗したが、却って不自然な態勢になっただけだった。洗濯機で洗われているシャツのように揉みくちゃにされながら、カリーファがもぎ取られそうになるのを懸命に抑えた。ぐったりとした無防備な身体は、されるがままに折り畳まれ、揉みしだかれて厄介な荷物となっていた。
 それでも、絶対に手を離したくなかった。
 腕に抱いたものは二度と手離さないと決めていた。たとえ最悪へ突き進もうとも切り抜けていけるだろう。……アキラはどれだけ回り道で迷ったとしても、いつか必ずゴールに辿り着くと信じていた。
 腕のなかのカリーファが、身じろぎした。
 気絶から覚め掛けて水を吸い込んだのか、口と鼻から大量の空気を吐き出して、苦しそうに手足をばたばたさせる。咳き込むように残りの空気を気泡に変えた。
 アキラの肺も限界に近かった。新鮮な空気を求めて、体中が悲鳴を上げている。心臓は痛いほどに波打ち、目の前が暗くなってきた。指先から感覚がなくなってゆく。
《……後継者よ!》
 銀玲姫の声に、アキラは貫かれたように感覚を呼び覚まされた。気が遠くなりかけていたのだ。
《さあ、『箱』にしまわれたものを解き放つがよい!》
 朗々と響き渡る声には、運命を指し示す効果があった。導かれて目を向けた先に、弛緩して漂う鵺の姿が見える。
 それも一瞬のことで、水中の竜巻じみた流れに視界が遮られ、上下も左右も判らなくなる。
 アキラは、咄嗟に手を伸ばした。
 後ろ足らしい象の皮膚に触れたとたん、渾身の力を篭めて掴む。
 そのままもつれ込み、アキラ達は眩しい光の奔流に投げ出された。


第八章(4)に続く。



ああ……もう本当に、なんて言っていいか……

第八章(2)


 はばたきごとに大樹の姿が鮮明になってくる。よく見れば〈森〉の樹よりも野趣あふれる風情があり、黒い幹からは太い枝が幾本も飛び出て豊かに葉を茂らせていた。雲のように隙間なく広がり、ブロッコリーの連なりに覆いかぶさっている。
 皮膜を現出させたまま、無事に降り立つのは不可能だった。アキラは速度を落とさずに飛行して、激突する手前で、
「……戻れ!」
 と命令した。
 長大な蝙蝠の皮膜は、微かな抵抗を見せてから背中の内側に潜り込む。放り出された身体は斜めに落ち、こんもりとした枝葉に突っ込んだ。
 騒々しく枝を折る音と身体をかすめてゆく葉に巻かれて、アキラは地盤を掘る削岩機の気分を味わった。足で削ってゆくひと枝ひと枝が、アキラが先に進むのを拒んでくれる。尖った枝先が服を裂くのに任せ、腕で顔だけを庇った。
 目も耳も騒々しい葉ずれの中にある。感覚だけが頼りだった。
 ごつ、と太い枝が足に当たり、「今だ」と思う瞬間があった。
「風よ!」
 身体の奥に潜む黄金色に、呼び掛けるようにして声を上げた。
 のたうつ力が解放感に震えるのが感じられる。それは凝縮してから、一気に拡散した。
 アキラから束となって放出された精気は、上昇気流となって持ち主の身体を押し上げる。落下を相殺する作用を持っていた。
 落葉が舞うなかをふんわりと着地して、アキラはようやく顔を覆っていた腕を下ろした。
 額に浮いた汗を拭い、息を吐く。
「もしかして、結構いい感じで制御できた、かな?」
 暴れ馬だとばかり思っていた力は、ほんの少しだけ従う意志を表わした。それに気を良くして、アキラは目の前にそびえる大樹を見上げる。
「大丈夫、俺はやれる……」
 自分に言って、大きく口を開けるうろに入っていった。
 内部は暗かった。目が附いていけずに残像が踊り、めまいのような感覚に襲われる。じっと辛抱強く回復を待っていると、ようやく蛍の乱舞のような光が明滅しているのが見えてきた。
 石組みに囲われた泉が微かな光を放って息づき、波打った表面から燐に似たものがあふれて飛び立つ。生命力が物質化したもののようだった。
 半地下状にえぐれた床に飛び降りると、アキラは初めて見る光景に見惚れながら泉に歩み寄った。
 すると、
「むぎゅう……」
 足元から精根尽きた声が聞こえる。
「アキラちゃん、なの?」
 カリーファが白い髪を乱して倒れていた。
「お前、無事なのか?」
「うん。あちこち痛いけど平気だよ」
 意外と頑丈なところを見せて起き上がった。目が回っているのか頭をぐらぐらさせ、手探りでアキラの足に縋り付いてくる。
「ねえ、あいつが変になっちゃった……」
 不安に怯えるカリーファは涙声になっていた。
「どうしよう、僕どうしたらいい? アキラちゃん、知ってたら教えてよ」
「なら、教えてやる」
 アキラは乱暴に白い衿を掴んで立ち上がらせた。べそをかく頬を軽くひっぱたいて、
「泣くな」
 と優しく言う。
「鵺をつれてきたのはお前だろ? だったら、見届けろ。解ったか?」
「よく解らない」
「つまり───とりあえず、追い掛けるから一緒に来い」
「うーん……でも見失っちゃったし───」
 歯切れの悪い返事に、アキラのこめかみには血管が一本浮き上がった。
 次の瞬間、アキラは渾身の力を籠めて頭突きをかませていた。
「ぶみい!」
 カリーファがぐったりとして、呆気なく気絶する。
「これでよし、と」
 アキラは気楽に呟いて、カリーファを肩に担ぎあげた。他人のペースに合わせられない性格のアキラだった。
「さて……」
 軽く手をあげて気配を探った。
「白髪小僧を振り落として、泉に飛び込んだ……ん、間違いないな」
 空気に転写した存在記録は、鵺のものとは思えないほど希薄ではあったが、細くたなびいて残っている。
 入り口から、ほぼ真っすぐ“おしら様”の泉に続いていた。
「銀玲姫」
 少々やかましい喋り方を思い出して、挨拶代わりにと手のひらに水を受ける。
「不遜な行為だと怒られるかもしれないが、悪いな。こっちも火急の用だ」
 ひと掬いを、洗礼のように頭から掛け、
「───土足で入らせてもらうぜ!」
 カリーファを抱え直すと、飛沫を盛大に跳ね散らして飛び込んだ。


第八章(3)に続く。



あうー、ここここれは……

第八章(1)



 アキラが飛び込んだときは、鵺が蛭子を呑み込んだ直後だった。
 長老の月影が悲痛な叫びを洩らし、何事かと振り向いた村の者達が凝然としている。
「キマ! どうして……、ねえ吐き出してよ!」
 怯えたカリーファが、鵺を揺さ振っていた。
「みんな落ち着け!」
 アキラは息急き切って立ちはだかる。
「俺に任せろ! これには訳があって……」
「アキラちゃん! キマが、キマ鵺が!」
「知ってる」
 簡単に言ってから、殺気立つ村の者を睥睨した。茫然とした後にやってくる怒りが、祈りを基本とする妖魔たちの形相を変えている。
「冷静になれ! 俺がなんとかするから、こらえるんだ」
「こらえろ、と?」
 兎族の男は、込み上げる怒りに顔を引きつらせて、輪の前へと進み出た。
「あなた様は仲間が喰われてもこらえろと仰るのですか?」
「そうじゃねえよ! 俺がなんとかするって言ってるだろ」
「どうやって、ですか」
「それは───」
 これから考える、とは言えなかった。
 その時、言葉に詰まったアキラを押し退けるように、鵺は咆哮をあげた。猛々しい、勝利の雄叫びだった。
「捕まえろ!」
 牛族の血気盛んな青年が、号令を掛けた。
『命あるものを傷つけてはならない』という掟は、妖魔のなかに刷り込まれている。しかし仲間を想う気持ちと、集団心理の前ではひとたまりもなく消し飛んだ。
 輪が崩れて、男たちが雪崩を打つ。
「仇を討て」
「腹を割いて取り出せ!」
 村人たちの口から怒号が飛び出した。
「ばか、やめるんだ!」
 アキラは唇に指を付けて術を発動させ、不可視の障壁を張った。先頭の何人かが弾き返されて目を回す。
 熊の頭領が力任せに殴ると、一端が霧散して消えた。精気で練り上げた壁は、脆かった。
「ええい、くそ!」
 振り返りもせずに鵺のたてがみを掴み、
「ここは一旦、退くぞ!」
 障壁が叩き壊されるのを背にして、追われるもの達は走り出した。何も考えずに細い通路を抜け、角を曲がるたびに、
「ぐえ!」
 と変な声がする。
 カリーファは鵺の首元にしがみついていたために、引きずられる形で附いてきていたのだ。どうやら振り回されて建物にぶつかっているらしいのだが、構っていられないので放っておく。
「鵺! あっちだ」
 集落を出て、〈森〉の樹々が茂っている方に向かうと、鵺は急に立ち止まって身体を強張らせた。
「何やってんだよ!」
 アキラの声が聞こえないのか、自分の中に耳を澄ますように俯く。
 そして背中の筋肉に力を注ぎ込むと、持てるかぎりの速度で駆け出した。アキラの足では間に合わないほどに疾駆し、落葉を蹴散らして見えなくなる。
「うぎゃ!」
 今度は樹に叩きつけられたカリーファの声が、やや遠くに聞こえた。
「あの、ばか───」
 見事なまでに置き去りにされ、唇を曲げて吐き出す。後を追おうとしたとき、「いたか?」「向こうだ!」という割れ声を耳にして、アキラは舌打ちした。
 目を閉じて、開ける。
 それだけで、蝙蝠の皮膜がシャツとジャンバーを突き破って現出した。軽く地面を蹴って、自分の一部である皮膜に力を籠める。
 アキラは軽々と、樹の天蓋の上にはばたいていった。
 狭くなっていた視界が開け、地平線に沈みかける陽が残照を投げかけているのが見えた。透明感のある深い空が紅の化粧で蝙蝠の妖魔を迎える。
 眼下に見えるブロッコリーのような〈森〉も、赤い色を刷いて綿々と連なっていた。
「───どこだ?」
 気配を感知するアンテナを広げるまでもなく、
「ぶほ」
「みぎゃ……」
 変な声は鵺の駈けていった方向へと真っすぐ続いている。
 どこに向かっているのか、延長線に目をやってアキラは眉をしかめた。一際高く盛り上がり、周囲とは一線を画している樹がある。
「あれは……“おしら様”?」
 銀玲姫が化身しているという大樹は、邪鬼の層や地表を突き抜けて、堂々たる姿を現していた。
「引き寄せられているのか?」
『鍵』が差された『箱』ゆえの行動か、それとも単に誰も来ないところを目指すつもりなのか……解らないが、はっきりしていることがひとつだけある。
「俺は追うっきゃねえ、ってことだな!」
 皮肉げに洩らして、アキラは全速力の飛び方に変えた。


第八章(2)に続く。



今までのを全部、「 縦書き文庫 」 にアップして、それを記事に貼り付けて編集し直してます。まあ自己満足なんですけどねえ……(汗)

なんとなくネットの海に漂っていましたら、気になる記事を見つけました。





【東洋水産、カップ入り即席麺「マルちゃん 味噌カレーミルクラーメン」を発売】

味噌カレーミルクラーメン新発売のお知らせ



 東洋水産株式会社(本社:東京、社長:堤 殷)では、カップ入り即席麺「マルちゃん 味噌カレーミルクラーメン」を平成20年12月1日(月)より全国にて新発売致します。

 この度の商品は、青森市民のソウルフードでもある「味噌カレー牛乳ラーメン」を再現した、今までにないフレーバーのカップ麺です。“味噌”“カレー”“ミルク”という最もポピュラーで馴染みのある素材を絶妙なバランスで合わせました。パッケージは、こだわり、本物感を付与することで、店頭で消費者の購買意欲を掻き立てるようなデザインとなっております。

※「味噌カレー牛乳ラーメン」・・・青森市内に展開している「味の札幌大西」を中心とした系列店舗で出される人気メニュー。30年以上の間、青森市民に愛され続けている商品です。



■商品コンセプト
 青森市民のソウルフード“味噌カレー牛乳ラーメン”をカップ麺で再現。
 インパクトのあるフレーバーを”青森発⇒全国のラーメン好きのお客様に是非食べてもらおう“との目的をもって開発した企画商品。


■商品概要
 粉乳のミルク感でコクを出し、カレー粉でカレー風味を加えインパクトを出したコクのある味噌味スープが、なめらかな口当たりとコシをあわせもったノンフライに良く絡みます。後入れのバター風キューブの風味豊かなバターの香りが食欲をそそる、冬場にぴったりの商品です。





またまたまた~! ネットはこれだから。
変わってて面白い商品とか、ありそうでなさそうな商品とか、うっかりすれば信じちゃうものが転がってりいるのがネットの面白いところ……などと思っていましたら。


0204207_01.jpg




東洋水産(株)ホームページより








本当に発売されるようです!

私はぜひ訊きたい。
青森市の方に、心の底から訊いてみたい。

「味噌カレーミルクラーメンが、 “ソウルフード”って、

マジっすか?!」



只今カルチャーショック中……


これからお見せする画像は、絶対に……ずえーったいに、書いてある文字を声に出して読んではいけませんよ



解りましたね?








2006022726_1052866603.jpg




あーっ! 声に出しちゃダメ!って言ったのに!



小学生かっ。
せっかくなので、かなり昔に 「縦書き文庫」 にアップした短編小説を貼り付けたいと思います。
月夜ノ蝙蝠丸 名義ですが、お気になさらぬように。

「NEXT」 をクリックして本文にお進みください!





カミングアウトする時期なのかっ。



現在の小説を、最初からアップしなおすことも検討中です。
縦書き読みやすいよ、縦書き……




そろそろブログの更新でもしましょうか、などと思いまして、小説をアップしたのはいいんですけど……

「予約投稿」 ってやつをやろうとしていたんです。 私は。
今週は一日一編ずつアップを予約しておこう、 おお~、私って計画的~すンばらしい~! 自画自賛に酔いしれる私。

予約を済ませて、確認画面を開けてみました。

そこでビックリ!

どこをどう間違ったのか、全部しっかりと公開されていまして、全っ然 「予約」 なんてされてません!


やっちまった……

でも、今から 「予約投稿」 に直すのもカッチョワルイ感じもしますので、このままにしてしまいますね。多分どこからも苦情が来ないだろうと思いますし……喜びの声なんかも皆無だろうという気がしますのでねえ……ハッハッハ。

この小説、実はびっちりと第九章まであるんですよね……
もしかして、このまま毎日五編くらいアップしていけば、今週中にはエンディングを迎えられますね。その方が重荷が取れていいかもしれないという誘惑が芽生えつつあります……



「予約投稿」 という禁じ手を使ったのがいけなかったんですかねえ……

第七章(6)



「さあ、そろそろ本題に取り掛からねばな」
 ガムシャナは急き立てるように手を打った。
「よく見なさい、蛭子は───なのだ」
 蛭子の名が出てようやく我に返ったアキラは、重くなった頭を振った。うまく切り替えられない。
「悪い、もう一回言ってくれ」
 冷たすぎる泉の水を一口飲みながら言うと、ガムシャナは肩をすくめて繰り返した。
「蛭子は、閉じた鍵だと言ったのだよ」
 アキラは泉の水を盛大に口から噴いた。
「な、なんだってえ!」
「何を驚いているのだ」
 ガムシャナはアキラの仰天した様子に眉をひそめた。
「考えてもみなさい。蛭子が生まれて、白き御子が鵺をつれて現われる。偶然にしては出来すぎではないか? これは、ひとつの根から来ている」
「か、鍵ってなんだよ! 統皇もそんなこと言ってたけど」
「ああ、だから『箱』に差し込む『鍵』だ。事というのは順繰りにやってくるのではなく、一気に訪れる。原因の詰まった『箱』に合う『鍵』さえあれば、また一気に解決する。閉じたものは、開けるしかないのだ……」
「ああ、それだ!」
 アキラは興奮して立ち上がった。
「蔵書室で見たんだ! あれは───黒い表紙の本だった」
「私が屋敷に残した書だな。あれは手に取った者にとって、答えとなる言葉が浮かび出るようになっている」
「なんで、そんな大事なもんが埋まってるんだよ、あの蔵書室!」
 ガムシャナは呑気に、含み笑った。
「普段は読めないよう、術をかけておいた。悩みを持つ者が必要とするとき、本棚の片隅にでも出現すればよい、とな」
「茶目っ気ありすぎるぜ! 必要なときに急いでたら読めねえじゃんか!」
「書とは、そういうものだ」
 腕組みをして、頷いてみせる。
 アキラは目眩がした。
「もういい、つまり蛭子が『鍵』なんだな? じゃ『箱』は?」
「ふふ……」
 ガムシャナは意味深に含み笑う。
「これだ」
 指を差したのは、鵺だった。
「……」
「どうした?」
 不気味に沈黙した後、アキラは唸るように詰め寄った。胸元をねじり上げはしなかったが、限界まで顔を近付けて睨み付ける。
「おいコラ、おっさん」
 ガムシャナが目をしばたくのを無視して、
「また俺をからかってるんじゃねえだろうな?」
「からかう?」
「そうだよ! どこをどうやったら鵺に蛭子を差し込める? 『生』きてんだぞ。合体でもするのかよ、『シャキーン』とかいって戦闘物かよ! ああ、もう自分で言ってて訳解らねえ!」
 悔しさに声が嗄れてくる。
「私の言葉が信じられぬ、と言いたいのか?」
「そう───」
 言い掛けたアキラの顎を、やにわに掴む手があった。黒光りして鋭い鈎爪を持つ、鋼鉄じみた破壊の左手だった。
 黄金色の目は挑戦的な色を帯びて、対峙する相手を見定めるように細められている。
「では、やってみようか?」
 声は逆に、厭らしいほど平静だった。
「私が一押しすれば、事態は目まぐるしく進む。それこそ一気に終息するだろう」
「やれよ! できるもんなら、やってみろ」
 万力に締め付けられているような顎を、アキラは無理やり動かした。
「本当に『できる』なら、やってみせろよ! 俺はな、さっさと終わらせたいんだ!」
「簡単に言ってくれるではないか。ならば何が起こってもよいのだな? 私が関与すれば、要らぬ騒乱が村を襲うことになるが───そなたに収拾できるのかな?」
「やってみせる!」
 アキラは全身の力を篭めて、叫んだ。
「意地でも成し遂げて見せるさ!」
 ガムシャナは虚を衝かれたように、たっぷり時間を掛けてアキラを見詰め───そのうち、氷が溶けるように黄金色の目からは緊迫した色が落ちてゆく。破壊の左手からも力が抜けた。
 いましめを解かれたアキラが不機嫌そうに顎をさすったとき、ガムシャナは、つと水鏡を指差した。
「見なさい」
 カリーファの白い姿が、月影に歩み寄る姿が映っていた。鵺の身体に手を置いて、老人が抱く蛭子にも手を伸ばしている。村の者達は、穏やかな表情で立ち話に興じていた。
「ここに、一頭の鵺がいる」
 映像は獅子の頭を持つものに焦点を絞った。
 白い鳥を飾りのように乗せて、ワニの前脚に顔を埋めている。寝たふりをしているが、蛇のたてがみがそれを裏切って動き回る。
「願わくは、私の関与によって歪みを生じさせぬように!」
 ガムシャナは一度目を閉じてから、力を篭めて、指を鳴らした。
 その途端、鵺の口に固定されていた口輪が、弾け飛んだ。
「あ……!」
〈神話〉と〈童話〉の呪具は、万能の者の手に掛かれば硝子細工も同然である。細かな欠けらとなり、地面に落ちる頃には塵と化していた。
 鵺は驚いたように目を見開いた。何が起こったのか解らない顔で辺りをうかがい、徐々に自分の力を抑え付けていた物が消え去ったことに気が付く。
 前脚でひげをこすり、そして───突如として苦しみ出した。
《蝙蝠!》
 思念は水鏡を通して響いてくる。
《助けてくれ、蝙蝠! 息が詰まる、苦しい!》
「鵺……!」
 咄嗟に伸ばした手は、鵺には届かない。
《身体が壊れそうだ! 俺が俺でなくなる、恐い、どこにいる? 蝙蝠!》
 もがく姿を見詰め、アキラは不吉な予感に全身が凍った。
 立ち上がろうと手を突くが、震えていて身体を支えてはくれない。
「すぐ行くから───待ってろ」
 鵺は頭を振って何かを払い落とそうとしている。
《ああ……、蝙蝠、俺は》
 スイッチを切り替えるほどの早さで、鵺の目の色が変わる。
《もう、駄目だ……》
 頭を低くして身構えた瞬間、鵺は肉食獣の口蓋をいっぱいに開いて月影に飛び掛かった。
 子牛ほどもある鵺に体当たりされて、小柄な老人の身体が転がる。鵺は月影ではなく、その腕に収まっている蛭子に喰いつき、唸りを上げて丸呑みにした。
『箱』に、『鍵』は差し込まれたのだ。こんな形で。
「ガムシャナ」
 アキラは打ちのめされた声を上げる。
 悠然と構えていたガムシャナは片方の眉を上げた。
「なんだ? 文句なら聞かんぞ」
「違う。俺を、立たせてくれ」
 わななく足は思い通りに動いてくれない。
 ガムシャナに腕を持たれて漸く地に立ったアキラは、自分の腿を思い切り殴り付けた。不自然に筋肉が強張っている。
「大岩はすでに地表へと繋がっている。行きなさい」
「言われなくても!」
 きつい一瞥をくれて、よろけながら大岩を目指して走った。一歩ごとに確かになる足取りは、緑のじゅうたんを踏みしめて軽い。
 事態は動き出した。
 たとえ冷汗で身震いしようとも、停滞しているよりはいい。……アキラは今になって、蜜子の言葉は正しかったのだと認めた。考え込んでいるよりは、行動している方が性に合っている。
 樹々の間から、黒くうずくまる大岩が見えた。
「礼儀だから、一応言っておく!」
 アキラは立ち止まると、振り返って声を張り上げる。
「俺、人間界に住んでるから〈森〉の風が絶え間なく吹いているかは解らない! 次までの宿題にしといてくれよ、あんたが気に入らない答えを何度でも探して来るから!」
 遠くに見える人影は、手を振って『行け』と合図する。護りの右手を挙げて、笑っているようにも見えた。
 アキラは生意気な猫みたいに目を細めると、来たとき同様、肩から押し入って大岩を抜けた。


第八章(1)に続く。


やっと……第七章が……終わった。。。(どたっ)

第七章(5)



《そこな男》
 不機嫌そうな声は、命令し慣れた口調で言った。
《礼儀もわきまえぬ態度、わらわはきわめて不快ぞ》
「はあ……」
 と間の抜けた返事をすると、光がアキラに向き直る気配があった。
《突然の訪いは赦す。しかし挨拶もせぬうちに頼みごとをするなどとは、無礼にもほどがあるのではないか?》
「ああ、うん……」
 ガムシャナが目配せしているのに気が付いて、慌てて言った。
「それは、あの、申し訳なかった」
《今更解ったとて遅かろう。だが、以後厳重に注意するように》
「まあ、頑張ります……」
 アキラまで小さくなって答えると、光の発している精気は柔らかくなった。
《まずガムシャナに、〈森〉に吹く風のことを報告せよ》
 ゆっくりと曖昧な輪郭を描き、身分の高そうな少女がかげろうのように現れる。瞳には強い意志を秘めていた。
《もののついでに教えておく。〈森〉の大気をつかさどる精霊は、ガムシャナの息子なのじゃ。常にその身を案じておる。……そこまで言えば、こやつがそなたの言うことをはぐらかしてからかったとて、文句は言えまいのう?》
「あ───」
 親が子を思う気持ち、そして子が親を思う気持ち。アキラはどちらもよく知っていた。
 言葉を失ったアキラの代わりに、ガムシャナが再び平伏する。
「お赦し下さい、姫。私がふざけ心を起こしたばっかりに」
「いや、謝るのは俺の方だ」
 アキラも跪いて、うなだれた。
「自分のことばっかりで悪かった。済まない」
《和解したかえ?》
 どことなく得意そうに言って、ふたりを交互に見やる。
《では、ガムシャナに申す。この男に道を示してやれ。……そして、後継者。全てはそなたの手で解決するがよい。ガムシャナを頼るな。万能ではあるが、今回の顛末には必要なかろう。助言を得るだけでよしとせい》
「蛭子が助かるなら何でもいいよ。素直に聞くさ」
《それが良かろう》
 淡い姿が揺らめいて、ろうそくが消える間際のように細くたなびいていく。
《わらわは少し疲れた。後は任せたぞ》
「はい。ゆっくりとお休みになって下さい」
 精一杯のうやうやしさで、ガムシャナが礼を取ると、
《休むのではない、と言うておるに……》
 と不興げに呟いて、“姫”は姿を消した。
 残された男ふたりは、揃って安堵の息を吐いた。
 ガムシャナは緊張を解いて座りなおし、アキラは水鏡の映像に変化がないのを確かめてから、草の上にあぐらをかく。
 しばらくはそよ風が水鏡の表に水紋を描くのを眺めていたが、アキラは我慢できなくてガムシャナに目を向けた。
「あのさあ、さっきの誰? あんたと違って実体がなかった」
 幾分勢いを無くした声で言うと、ガムシャナは弱い笑みを浮かべた。
「あのお方は、銀玲姫。……私の、主人だ」
「はあ?」
「説明を始めたら長くなるのだが……もともと〈森〉はあの方が全て構想を練り、私はただそれを現実のものにしようと努めたにすぎないのだ。そして黄金色の力も、姫の家系が近親婚を繰り返して作り上げ、そして姫の肉体が滅びたとき、その力を私が受け継いだ」
「えーっと……、つまり一番の功労者ってことか?」
 首を捻るアキラに、ガムシャナは頷いた。
「そうだな。その通りだ……あの方は正史に名を刻まれるのを望まなかった。だから私がひとりで作り上げたことになっているが……本来はあの方だけが崇拝されるべきなのだ。姫は私などよりも深いお心の持ち主───生あるうちから動物や人間の行く末を憂慮なさっておられた」
 懐かしいものを見つめる目つきで、ガムシャナは遠くに視線を投げた。
「〈森〉を安定させるため、魂魄となった姫は私と共に〈森〉の核となった。私は平安を祈る要になり、姫は妖魔を生み出すという大役を担った」
 堂々とそびえる大樹を仰いで、目を細める。
「地表にもあるだろう? 村の外れに、この樹が」
「……もしかして、“おしら様”?」
「そうだ。姫はこの樹に化身して、妖魔の母となっている。持てる力を全て注ぎ込んでいるために、先程のようにひとの姿をとることは滅多にない」
 アキラに誇らしげな笑顔を向けた。
「そなたは姫に謁見できた、とても幸運な後継者なのだ。そして、実をいうと私も久しぶりにお会いすることができた。少しだけ、そなたに感謝するぞ……」
 ガムシャナが銀鈴姫について語るとき、言葉や仕草の端々には愛情がにじみ出ていた。
「もしかして───あんた達は……」
 アキラは、唐突に理解した。
“おしら様”とは、旅人の安全を守る道祖神のことだ。おおむね男女一対で表されることが多い。
 恐らく銀玲姫は、ガムシャナとふたりで未来永劫〈森〉を守護し続けるつもりなのだ。輪廻を繰り返す動物は───そして妖魔も───『死』を拒んだふたりの目には旅人に映るだろう。
 そして銀鈴姫とガムシャナもまた、旅人なのだ。〈森〉というゆりかごに乗って時間を旅する者たち……。
 互いの手をしっかり握って、助け合いながら歩んでゆく。
 果てしない時を、ふたりで。
〈森〉の父とも言えるガムシャナ、そして妖魔の母たる銀玲姫。この“両親”が居るかぎり、〈森〉はいつまでも優しい場所でありつづけるだろう。
 アキラはそれを確信した。


第七章(6)に続く。



今さらだけど、もう少し字の隙間を開けてアップした方がよかったかな。読みづらいですねえ……

第七章(4)



 あっけない答えに、アキラは目を見開いた。息が荒くなって、言葉が出てこない。
「ほ、本当に?」
 囁き声で言うと、ガムシャナは含みのある笑みで、首肯いた。
「本当だ」
「蛭子を助けられる?」
「ああ」
「何もかも丸く納めることが……」
「できる」
「じゃあ、やってくれよ! ……頼む、このとおりだ!」
 アキラは衝き動かされるままに、ガムシャナに駆け寄ってひざまずいていた。
「そなたは……」
 ガムシャナは、困った顔で呻く。
「自分のことでは意地を張ってみせるのに、他者のためなら頭を下げるのだな」
「そんなんじゃない。これは───自分のためだ!」
「……」
「俺は誰もなくしたくない。目の前にいる奴を失いたくないんだ! 蛭子だろうと何だろうと。だから」
「そう決心したのは、人間の親に死なれてからか?」
 はっと顔を上げた仕草は、肯定したのも同じだった。
 ガムシャナは護りの右手で、優しくアキラの髪を撫でる。
「余程いい親だったのだろうな。そなたの本質には“祈り”がある。無我とも言えるものが」
 無造作な手つきは、払い除けるのが勿体ないほど心地よかった。それを敢えて、乱暴に頭を振り、
「俺の話なんて、どうでもいいと言ったろ」
 後退って、睨み付けた。
「はっきりさせておくが、ここに来たのはあいつを助けてほしいからであって、それ意外の話はお断わりだ。ついでにもうひとつ……俺は後継者の力を捨てる気でいる」
「……ほう」
「蛭子を助けてもらうためには何でもするが、俺は後継者として来たんじゃなくて〈森〉の代表として頼みに来たつもりだ。無理だと言うなら今すぐ帰る」
 食いしばった歯が、軋む音を立てる。ガムシャナの返答次第では、一秒も無駄にせず地下を後にする気だった。
 視線だけで殺せるほどの目つきを、ガムシャナは平気で見返して来た。
「まあ、そういきり立つな」
 間に漂う熱を冷ますように、手を振って見せる。
「少しぐらい大目に見てくれないか。なにしろ私は、前の後継者がここを訪れて以来、会話をするのは一世紀ぶりなのだぞ」
「……だから?」
「孤独な年寄りをいたわれ、と言っているのだよ。そなたが焦る気持ちも解るが、私としてはもう少しなごやかに会話をしたい気分なのでな」
「俺はそんな気分じゃない」
 とうとう我慢が切れて、勢い良く立ち上がった。
「来たのは無駄だったようだ。……帰る」
「こらこら、待ちなさい」
 骨太の大きな手で肩を掴まれた感触がした。
 重みまでもが伝わってくるほどでありながら、ガムシャナ本人は座ったままである。質量分離の術だと気が付いて、頭に血が昇った。
「離せ! あんたと問答してる暇はない!」
「急がば回れ、と言うだろう。ほら、暴れるでない───姫を起こしてしまう」
 アキラはガムシャナの言葉も耳に入らずに、肩を掴んでいる手の重みを払おうともがいていた。
「手を貸してくれそうにないから帰るって言ってんだよ、力ずくで引き止めるなんて横暴だぞ! 解らねえのかよ、このくそったれマッチョ! 時代ずれのロンゲ! 期待させるだけさせといて、のらくらしやがって!」
 歯噛みして地団太を踏む。
 そのとき、空気が一変した。
《喧しや!》
 雷鳴が轟いたような一喝を浴び、ガムシャナはがばとひれ伏した。 
 アキラとガムシャナの間に小さな光が出現し、抗うことのできない清らかな色を放っていた。
「姫! お目覚めに───」
《わらわは常に覚醒しておる。この男を離しておやり》
「はい……」
 居住まいを正して、軽く手を振る。それだけでアキラの肩に居座っていた重みは掻き消えた。
《そなたはなにをしておるのだ。子供のけんかではあるまいし》
「申し訳ありません……」
 平身低頭の態でガムシャナがかすれた声を出した。
 体の自由を取り戻したアキラは、〈森〉の神にも等しいと崇められているガムシャナが、叱られて小さくなっている姿に唖然とした。そんなことができる人物がいるとは伝えられておらず、声の主が誰かなど想像もできない。


第七章(5)に続く。



このタイミングで新たな登場人物が……ミステリーだったらありえない展開……

第七章(3)



 密になって地を這う雑草は、緑のじゅうたんのように足取りを軽くしてくれる。
 腰の高さまでの低木が赤い実を付けている茂みを抜け、一本立ちの樹が点在する向こうに丘があった。アキラが感心した樹の根っこが、地面から這い出て丘をすっぽりと包んでいる。その麓にあたる場所に泉は湧いていた。
 小さいが、水面の真ん中が微かに盛り上がって、ころころという音まで聞こえてきそうな泉である。
「手と口をすすぎなさい。気分がよくなるぞ」
 ほとりに座ると、傍らに腰を下ろすように手招きする。
 アキラはわざと離れた位置に座った。
「顔も洗っていいか?」
「ああ、良いが───ただ、少し」
 言い掛けている言葉も聞かず、盛大に水をはね上げて顔を洗う。その途端、
「うひゃあ!」
 と叫んで、身震いした。慌てて頭ごと振り、雫を振り払う。
「……水が冷たいから気をつけろと言おうとしたのだが、遅かったようだな」
「先に言えよ!」
 腹立ち紛れに水面を叩き、不貞腐れてそっぽを向いた。頭から湯気を出している様子を見て、ガムシャナはくすくす笑った。
「せっかちな男だな。意地っ張りで、えばりん坊、しかも癇癪持ちか」
「悪いかよ!」
「いや、なかなか面白くてよい」
 アキラが不穏な目つきで振り向くと、悠然と構えた美丈夫は憎らしいほど晴れやかな笑顔を見せた。
「そなたの根は悪くない。自然とひとを引き寄せるものを持っているな」
「面倒くさい奴とか厄介事しか俺のところには来ねえんだけど……」
 唇を尖らせて呟くと、真剣な顔つきに替えた。
「俺の話なんか、どうだっていいよ。さっきも言ったが、蛭子があぶない」
 極力冷静に、今までの経緯を話した。
 自分が門を開ける仕事を負っていることから、たまたま統皇が迎えに行った兎が蛭子として生まれたこと、カリーファと鵺が現われて、一緒に〈森〉まで来たこと───。
 ガムシャナは興味深そうに聞いていたが、
「どれ、ひとつ見てみようか」
 つと手を延ばして泉の水を触った。
「水鏡か?」
「そうだ。特にここの水は、私の目と同じだ」
 軽くかき混ぜるようにして表に波を立てると、水面は淡く点滅して、ゆっくりと像を映し出す。
 曖昧な色から、次第に鮮明な光景が浮かび上がった。村の広場らしい石畳が、夕暮れの紅に染まっている。
 歩くのと同じ速さで映像が動いてゆき、ゼブラゾーンを描く通りを抜けた。
「ちょっと待てよ、これ時間がおかしくねえか?」
 覗き込んでいたアキラは、ガムシャナを見上げる。
「俺がここに来る前と景色が変わってないぞ? こんなはずは……」
「これでよいのだ。今現在の〈森〉は、そなたが大岩を通ってから何分も経っていない」
「ってことは───」
「そう、地下と地表では時間速度が違う。つまりそなたは、他の者よりも少しだけ多く歳を取っているのだよ」
「逆浦島、ってわけだな」
 ぶすっとして呟くと、水鏡を厭そうに眺めた。
 カリーファが村の者達に囲まれている。ポケットから次々と風船を取り出して、みなに配っているからだ。手渡すそばから割れて紙吹雪が舞う。
「あ、これが白髪小僧。自分の名前を言わない、変な奴なんだ」
 見え隠れする小柄な身体を指差すと、
「名前を言わないのは、そなたも同じではないか?」
 ガムシャナは何気なく、痛いところを突いてくる。
 アキラは不機嫌そうな目を向けただけで、返事をしなかった。
「もっと右に動かして───そう、そこの辺をアップで」
 兎族の家には、月影が肩を落として座るそばに統皇がいた。蛭子を腕に抱き、何かを言って月影に返す。声は聞こえないが、心配はないと告げたらしい。
 統皇は気ぜわしそうに立ち上がると、兎族の家を出て行った。待っている魂の気配を察知して、屋敷に戻っていったという感じだった。長老は大げさに胸を撫で下ろして深くお辞儀をし、毛玉にしか見えない塊を抱き締める。
「これが蛭子か。……ふむ?」
 ガムシャナは身を乗り出すと、水鏡に浸した指を動かした。一歩退いた程度に映像が離れる。
 月影の足元に蹲る鵺の姿があった。まだ伝言鳥を頭に乗せたままである。
 ガムシャナは目を眇めて見詰めると、
「〈神話〉と〈童話〉の澱みから生まれたもの、白き御子と、蛭子───か」
 水面を撫でてから、指を引き抜いた。
「なるほど、そういうことか」
「何か解ったか?」
「解った」


第七章(4)に続く。



「今浦島」 か 「逆浦島」 かで散々迷った覚えがある……思いっきりどうでもいい思い出(泣)

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