本の話や宇宙の謎、猫の神秘、自作小説など、目についたものをなんでも盛り込むブログ。

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AB型であることを人に言うと、

「AB型って二重人格なんでしょ?」

と必ず言われます。

つまり……




0508307.jpg


他人からはこう見みられているということか……?


失礼しちゃうわっ。ぷんぷんっ!

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【あらすじ】
 動物の死後の世界─── ‹森› ─── を守護する妖魔 ・紫堂アキラは、人間界で喫茶店を営みながら仲間たちと暮らしている。
 ある日、‹森›の住人である兎族の月見が泣きながら店に飛び込んできた。
 なにやら大変なことが起こっているのだという……

最初から読んでみるかな?と思っていただけた方は →こちらから


(3)

〈森〉は動物の為の世界───繰り返す輪廻の中継地点、または楽園。
 その形状を空から見下ろすと、黒いブロッコリーが繁殖しているようにも見える。密集した樹々はほとんどが黒い幹に黒い葉を繁らせ、絡み合って天蓋を作り上げていた。
 ほぼ中央に統率者の屋敷がそびえ、周囲に妖魔たちの家が並んでいる。村、と簡単に呼ばれている集落は、共同体の必要もないがただ何となく集まっているだけ、というぞんざいさが漂っていた。もっとも、色々な属性を持った妖魔たちなので統一感がなくて当たり前であるが、それぞれが適度な距離感を持って平和に暮らしている。
 人間界のバランスそのままに、犬や猫の一族は大家族を構えている。草食、肉食獣たちはやや少なく、爬虫類と絶滅危惧種は限界に近く少ない。その中では、兎族は安定した数を保っていた。
「この間、仔が産まれるという報せが来たんです」
 感情がぶり返したのか、月見は顔の側面に付いた目から大粒の涙をこぼした。毛皮は水を弾くので、その涙はダウンライトの灯りを受けて七色に輝き、宝石のように美しい。
「あーあ、洟垂らしちゃってえ。……んもう、汚いなあ」
 ミイの突っ込みさえなければ、の話だが。
 アキラは適当にティッシュを手渡すと、
「落ち着いて……ほら、とりあえずケーキでも食えよ」
 問答無用で三人分並べた。ドギーとミイは突然無口になり、月見はしゃくり上げながらも手掴みでケーキを丸呑みする。
 アキラは感心したような目を向けた。
「いい喰いっぷりだ。どうだ、うまいか?」
「まずいです」
 あっさりと答えて、毛むくじゃらの手を舐める。
「生地の焼き加減が中途半端ですね。さくさく、またはしっとりがベストでしょう。それにパウダーが多すぎます。点数を付けるとしたら56点」
「……あ、そう」
 気の抜けた返事をして、煙草に火を点けた。ゆっくりと紫色の煙を吐いて、幾分厳しい表情でドギーとミイを見つめる。
 その何気ない仕草に反応し、すばやく行動を起こしたのはドギーだった。
 目にも留まらない速さでミイを羽交い締めにして、口元を塞いだのだ。
「アキラ様、このばかばかうんこ猫を捕らえましたでございます!  こいつは日頃からねちっこい喋り方でわたくしの脳を上から下までかき回し、引き摺り出すと共に地べたに叩きつけて踏み躙る嫌らしい奴でして」
「へえ。……それで?」
「どうしようもない役立たず猫を生贄に捧げますので苛立ちが苛々したときにはどうぞ容赦なく憂さを晴らす用途にお使いくださいませ! アキラ様のほんの小さな精神上の負荷が後でとんでもない恐ろしい忌々しい出来事へと繋がってゆくのは必然! であればわたくしは今この場でこのばかばかうんこ猫を犠牲にして未来の芽を摘み取ってゆかねばならないのでございます! ですからどうかわたくしは今までどおりわたくしのアキラ様の一番大事な弟ということに!」
「むむう、むがむがー!」
 ようやく事態を把握したミイがもがき、無骨な手がそれをしっかりと押さえつける。
 アキラは暗い目をしてカウンターから出てきた。
「なるほどな。そんなに俺が好きか」
「もちろんでございます!」
 ドギーが誇らしげに頷くと、アキラはふたり纏めて抱え上げ、
「───だったら一蓮托生、って事で」
「どどど、どうしてでございますか!」
 叫びを無視してリノリウムの床に投げ付けた。もちろん狭い店のことなので大振りではないが、びたん、と音がして、犬と猫は今度こそ動かなくなる。
「あのー……」
 月見が気弱そうな声で言った。
「あたしの話は、どうなったんでしょうか?」
「おう。今行く」
 さっぱりした顔でアキラが返事をすると、水を差すようにドアベルが鳴った。
「やっぱりまだ出掛けていなかったのね?」
 優雅にドアを開けて、艶やかに手入れされた巻き毛が入ってきた。ベルの余韻も、どこか遠慮がちに響いて消える。
「蜜子? 何しに来やがった」
「『何しに』ではないわよ。あなたが───」
 と、言い掛けて月見に気が付く。
「あら? どうしたの、こんなところで」
「『こんなところ』で悪かったな」
 半眼のアキラが呟く。
 それを完璧に無視して、
「何かあったの? 兎族、月見」
 極限まで冷たくした目で蜜子は詰め寄った。責める口調に、月見は耳を垂らしておどおどと顔を伏せる。
「人間界に出てくることは、四鬼獣様に許しを得ているんでしょうね?」
「あの、あたし……」
 震える声で呟いて、アキラに縋る目を向けた。毛で覆われた手に肉球は見えないが、恐らく汗ばんでいるに違いない。
「蜜子、そんなに恐い顔しなくても」
 手を振って取り成すように言うと、
「あなたは黙ってて頂戴」
 にべのない言い方に、アキラはむっと眉を寄せた。
「お前なあ、ひとが穏便に事を運ぼうと努力してんのに、その言い方はねえだろ? 少しは耳を傾けるとか、自分が悪かったって泣いて謝るとか……せめて化粧を落として素顔で勝負するとかしてみろってんだ」
「意味不明ね。とにかく無駄口しか叩けない子に口を挟んでほしくないわ」
「無駄口だあ? お前は今、滅びの言葉を口にしたぞ?」
「あら、違ったかしら。だったら、関係ないことを喋りまくる二束三文の口、とでも言い直してあげましょうか?」
「なんだと? おとなしくしてりゃ付け上がりやがって!」
 そこに月見が大粒の涙をこぼしながら割りこんできた。
「あの、喧嘩しないでください。あたしが悪かったんです」
「勝手に謝るなよ! 俺はな、そういうのが大嫌いなんだ!」
 アキラは月見を振り返るなり怒鳴り付ける。
「文句言うならともかく、謝るたあどういう了見してんだよ?」
「あのあの、すいません」
「こら! 謝るなって言ってるだろ!」
「ちょっと待ちなさいよ」
 華奢な細い指が、アキラの肩を苛立たしそうに掴んだ。
「どうして彼女に怒るのよ? 全くあなたみたいな癇癪持ち、見たことないわ」
「お前が話をややこしくしたんだろうが! ああ、もう……訳が解んねえよ!」
 アキラは勢い良く床を踏み鳴らす───はずだったが、犬と猫が折り重なって倒れていたため、
「ぎゃん!」
 魂消る悲鳴が、尾を引いて響いた。
 そこに、ドアベルが鳴った。
 首を揉みながら青白い顔で現われたのは、アキラの人間界での後見人、江森だった。
 ため息を吐きながらケーキの後味が残る口を厭そうに蠢かし、やや投げ遣りな態度で顔を上げる。
 狭い店内に並んでいる顔を眺め、その目が驚きに見開かれた。
「これは、皆さん……」
 次の言葉が出せないでいる。
 江森は苦笑いし、後退りして、
「では、ご機嫌よう───」
 踵を返した。
「ちょっと待てーい!」
 その場にいた全員が、声を上げた。

第二章(4)に続く。




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縦書き(6)に続く。




話が全然進まねえゾ!と思った方、本当にすいません……


きっとどんな人も持っているだろう。
あんな人やこんな人、そしてあなたや私にも、ひとつぐらいはある……心の深い所にどっしりと根を張って無意識に人間を突き動かすもの。


それは。


トラウマ


トラウマ!


こんなのが心の底に住んでいるなんて、人間って不思議だね?


餌は何を食べてるのかなあ……



【あらすじ】
動物が死んだら、魂はどこに行くのか……?
心は───転生は?

動物は、死ぬと楽園に行ける……

主人公・紫堂アキラは、動物の死後の世界─── ‹森› ─── を守護する妖魔である。しかし、自分の立場に納得できていない。
それは、食物連鎖に抵抗感を持つ、人間の感覚でもあった……

最初から読んでみようかな? と思っていただけた方は →こちらから


(2)

 全身を包む長いコート、不恰好に大きい帽子にマスク、マフラー、手袋で身を固めた男か女かも解らない人物が飛び込んできた。
「アキラ様あ……!」
「な、何だ?」
 それは真っすぐにアキラに抱きつくと、子供のように大声で泣いた。
「大変なんです! あたしの一族に生まれた仔が───新しい仲間が」
「ちょっと待てよ! お前は一体……」
 言い掛けて、首筋に覗く柔毛に気が付いた。
「えーっと、もしかして月見か?」
 アキラの戸惑った声に、不恰好な人物はしっかりと抱きつきながら首肯いた。
「そうです。あたし……もう、どうしたらいいか解らなくて」
 泣きじゃくっている月見の帽子を脱がせると、銀混じりの白い毛に覆われた顔と、細長い耳が現われた。月見は兎の一族であるのだが、アキラ達のように完全な人型ではなく動物型の姿を持っているので、人間界には出て来られない筈である。本来は。
 しかし、こうしてここに居るということは───
「何かあったのか?」
 アキラは動揺が滲まないように苦労して、優しく声をかける。
「少し落ち着けよ。そんなに泣くと、目が真っ赤になっちまうぞ」
 くすっと泣き笑いして、月見は涙を拭った。その目はもともと真っ赤なのだ。江森の片目のように赤黒くない、明るい色───例えれば、動脈の血色。江森は静脈。
「とりあえずここに座って……コーヒーでも淹れてやるから」
「ありがとうござ───あら? この子たちは……」
 足元を見下ろして、
「どうして床で寝てるんですか?」
「ん、まあ、色々と……」
 口の中で呟いた途端、ドギーとミイはむくりと起き上がった。どうやら『とっちめられる』のに慣れてきて、アキラの機嫌が直るのを見計らっていたらしい。きつい目で睨むと、ふたりとも明後日の方向に目を逸らした。
「とりあえず、まあ座れ」
 疲れ気味の声で呟くと、コーヒーを淹れて流し台のへりに腰を降ろす。月見とその他二名はカウンターの椅子に落ち着いた。
「んで、月見い。一体何が大変なのさあ。俺に言ってみなよお」
「お前が訊くなよ」
 アキラは銀のトレイでミイの頭を叩いた。するとドギーが「そうでございますですよ」と身を乗り出す。
「この兎族の月見にアキラ様がアキラ様のお言葉でおっしゃりたいお言葉を、貴様の図々しい遠慮の欠片もない聞くに値しないどら猫声で口を挟むなど十年も二十年も百年千年万年も早いということをわたくしはわたくしの口から喉を震わせて忠告という正しい形を取って貴様の耳に───」
「お前も、黙ってろ」
 再び本来の用途を外れた使い方をされ、トレイは不貞腐れているように鈍い音を立てた。
 月見の「大変ですねえ」という同情の眼差しに顔を引きつらせながら、やっと、
「何かあったのか?」
 最初と同じ言葉を吐いたのだった。


(3)に続く。


ペース配分を間違えたかも?という気がしてなりません……




daifuku.jpg


いただきま ……∑(゚ω゚ノ)ノ!!!



食べちゃらめえええぇぇぇぇえええぇ!

本日、私の生息する関東では予想最高気温33℃前後。 只今私の家の気温はちょうど33℃です。こんな当たってもらいたくないときばっかり天気予報が当たります。ちくしょー、アチーのアチくねーのって。てやんでいべらぼーめ。矢でも鉄砲でも持ってきやがれっ。江戸っ子かっ?!

少しでも暑さを和らげようとして、髪を切りに行った。
すると美容師さん、私の言うことをさっぱり聞いてなかったのかミョーな髪型に仕上げてくれた。おいおい、頼んでねーぞ。



もやもやしたまま帰宅して、お昼ごはんを作りました。

udon.jpg


サラダうどんっ!


タラリと乗せたマヨネーズがカロリーをアップさせてくれています。
ダイエット中なのでヘルシーに済ませたいところですが、マヨちゃんが無いとすこぶるさみしい。 ちょこっとだけね、ちょこっとだけ。


さあ~て、食べ終わったらナワ跳びでもするか……





カロリーゼロでおいしい食べ物ってあるのかな?

【あらすじ】
動物が死んだら、魂はどこに行くのか……?
心は───転生は?

動物は、死ぬと楽園に行ける……

主人公・紫堂アキラは、動物の死後の世界─── ‹森› ─── を守護する妖魔である。しかし、自分の立場に納得できていない。
それは、食物連鎖に抵抗感を持つ、人間の感覚でもあった……

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第二章(1)

「あー、何やってたんだよお、アキラ様あ」
 小柄な猫族のミイは、入ってくるなり唇を尖らせた。
 続いて目の周りに青痣を張りつかせた犬のドギーも「おお!」と喜びに満ちた声を洩らしながら入ってくる。
 カウンターの中でひとりコーヒーを飲んでいたアキラは、面倒くさそうな表情を浮かべたが、すぐに気を取り直してにっこり笑った。
「よっ、ご苦労さん!」
「ご苦労さん、じゃないよお……ひどいんだから。ぷん」
 ミイが頬を膨らませる。
 アキラが姿を消してしまったので、いつもの見回りを二人に頼んだと江森が言っていたのだ。ケーキを食べて、寝込む前に。
 二人がカウンターに座ると、何度も沸かし直して不味いほうのコーヒーを出してやる。
「そんな顔するなって。ほら、これでも飲んで機嫌直せよ」
「コーヒー一杯で騙されないもんねえ。な、ドギー?」
 ドギーは再会の喜びに潤んだ瞳を、怒りの眼差しに変えてミイを睨み付けた。
「わたくしはわたくしのアキラ様がわたくしの目の前ににこやかにお立ちになっているのをわたくしの目で確認できただけで手と足と胸と背中が感動という名の美しい感情で満ち満ちてゆくのでございます! それがわたくしとわたくしのアキラ様の縁あさからぬ絆というものでございましょう……所詮、貴様のような猫ふぜいとは相容れぬ別種の理解の届かない単なる知り合い程度の仲だというのをわたくしはわたくしの目で今更ながらまのあたりに致しましたでございます! つまり───」
「また始まったあ。もう、うざいなあ」
 奇妙な喋り方には慣れっこなのか、げんなりしただけでそっぽを向く。
 ドギーは、その仕草に目を剥いた。
「うざいとは何事でございますか! わたくしの目の前でわたくしに向けてわたくしの悪口を言うなどとは猫程度の低劣で怠惰と惰眠を貪る一族にとって至極当然とはいえわたくしの耳から脳に入る事自体が赦せないとわたくしはわたくしの一族の誇りにかけて宣言するものであるのでございます!」
「宣言でも何でもすりゃいいじゃんかよう!」
 堪り兼ねてミイが怒鳴り返す。
「でもさあ、大まじにうざいんだもん。その喋り方なんとかなんないもんかなあ?」
「貴様こそ欝陶しい話し方をわたくしの鋭く敏感な耳元でわたくしに向けて喋るのを瞬きする間に止めるでございます! 寝そべって安楽な生き方をする猫のような食事時しか鳴かない猫のような話し掛けても尻尾の先を動かすだけの返事しかしない猫のような、まるで猫そのものの話し方をするのを今この瞬間から改めてわたくしの快活でいて清々しい話し方を手本にするのがいいのでございます」
「や・だ・ねえ!」
 不毛な口喧嘩に決着を付けてやろうと、アキラは腕まくりした。二、三発殴ってやれば口をきく元気も無くなる。
 しかし敏感な耳は、裏口から物音がしたのをとらえた。
 渋々とカウンターから離れ、休憩室を兼ねた裏部屋のドアを開ける。
 そこには小さな白い鳥が、隣家にあるサンザシの枝に止まってこちらを見ていた。現存するどの鳥にも似ていない、単調な顔と絵の具のような白い羽根を持っている。黒くて丸い眼球は、何の意思も表してはいなかった。
「……伝言鳥、か」
 そう認めたとたん、伝言鳥は枝を蹴ってアキラの肩に止まった。部品のような爪が服に食い込み、アキラは乱暴に鷲掴みにする。
 力任せに床に叩きつけると、伝言鳥は複雑な割れ方をして組み合わさり、光る球となった。
 部屋中に跳ね返る光は、立体映像を映し出す。
『蝙蝠の若き長、紫堂アキラに予言を託します……』
 涼やかな声と共に現われたのは、美しい女だった。
 首と手首に幾重にもアクセサリーを巻き付けた姿は、不思議と下品ではなく豪華な巻き毛によく似合っている。
 占い師であり霊媒と予言に長けた巫女、鳥の一族の蜜子であった。
 伝言鳥は伝言を届けるものであり、記憶させた映像を再生するだけなのだが、蜜子は軽い笑みを浮かべ、対峙しているようにこちらを見つめてくる。
「相変わらず芝居がかった女だぜ」
 アキラは鼻を鳴らした。
『私の霊感によれば……』
 蜜子は視線を避けるように俯いた。
『本日の三時ごろ、〈森〉の同志になるものが最後の一息を吐き出すと感じていますが───』
 また言葉を切り、睫毛を震わせる。
 その仕草にアキラは首を傾げた。なぜか、言いにくそうにしているのだ。普段の蜜子からは考えられないことだった。
「なんだよ、なにかまずいことでも?」
 答えは返ってこないと解っていながらも、言わずにはいられなかった。
 真っ先に考えたのは、動物が錯乱しているのではないかと言うことだった。
 めったないことだが、動物はその本性を見失って凶暴な面をむき出しにしていることがある。手が付けられないほど暴れ、何も見えず何も聞こえない精神状態になる。そのほとんどは澱んだ負の想念である『邪鬼』に冒されているのだった。
 アキラはまだ、そういった動物に出会ったことはない。身構えるような気持ちで蜜子の様子を窺った。
『……アキラ』
 蜜子は無表情にも取れる微笑を浮かべながら、言った。
『波動の乱れが起きていて、正確な時刻が割り出せないの。場所の所為かもしれないけど、こんなことは初めてだわ』
「何だよ、脅かせやがって」
 アキラは肩の緊張を解いた。
『気をつけて』
 蜜子は語気を強めた。
『想像もつかないことが起こるかもしれないわ。とにかく何かあったら江森さんに指示を仰いで頂戴。あのひとなら的確に対処してくれるはずよ』
「うるせえな、このインチキ占い師が」
『インチキではないわよ』
 からかう声にぎょっとして身をのけぞると、立体映像は『ふふっ』と笑った。
『あなたの言いそうなことよね。……驚いたかしら?』
 完璧に整った微笑は能面のように美しかった。アキラが唾を吐いて伝言鳥を踏み潰そうとしたとき、それすらも読んだのか、
『場所を言うわ』
 瞳に険しい色を浮かべて、早口になる。
『通称“運命の力”と言えば解るでしょう? あなたが義務として見回りする辺りよ。早めにいって捜して頂戴ね。それから……』
 言い終わる前に、頑丈なアキラの革靴が伝言鳥を床板にめり込ませる。画像は明滅して消えた。
『さいせい、おわりました』
 機械声で短く鳴き、複雑に噛んだ身体を解きほぐして元の姿に戻ると、開けっぱなしのドアから飛び立って行った。
「けっ!」
 乱暴にドアを閉め、苛立ちの余波で椅子を蹴飛ばす。
 蜜子という美女は、いつも苛々する存在だった。余裕たっぷりの微笑と完璧な美貌で、会うたびにアキラを子供扱いするのだ。
 実を言えば、蜜子に限らず〈森〉の住人には苛立っていた。単なる世間話であっても、体の内側がざわざわしてくる。その原因は、誰もが表情に乏しいからなのだ。
 蜜子は特に、微笑している仮面を張りつけているとしか見えない。変化のない表情は、無表情と同じ事だった。
 不機嫌なまま店へと戻ると、ミイの甲高い声が響いていた。
「このクソ犬クソ犬クソ犬う! お前は骨でも齧ってなよお!」
「なんですと! 聞き捨てならない言葉がわたくしの耳から脳へと入ってきましたでございます! 品行下劣な猫ふぜいが口の端を歪めて醜く言い立てるのをわたくし犬一族の誠実無比な高潔の魂はきわめて嫌悪するのでございます! しかしながら同じ程度の言葉でなければ通じない輩であるのは明明白白、となれば言わせて頂きますですが貴様のようなうんこ猫は即刻背中を見せて立ち去るのが道理というものでございます。このうんこ猫うんこ猫うんこ猫!」
「ああ!? 一回多く言ったなあ! クソ犬クソ犬クソ犬クソ犬クソ犬!」
「貴様こそ多く口から言葉を飛び出しているのでございます! 然らばわたくしも言わねばならないのが道理というものでございましょう! うんこ猫うんこ猫うんこ猫うんこ猫うんこ猫うんこ猫───」
 胸ぐらを掴み合って唾を飛ばすふたりに、アキラは頭を掴んで、派手にぶつけ合った。
「うるっせえんだよ! いい加減にしやがれ!」
 ふたりは目玉をぐるぐる回しながら、
「でも、このクソ犬が……」
「全ての責任と叱責はこのうんこ猫───」
 と言い掛けたが、仲良く片方ずつ耳を掴まれて引っ張られた。
「う・る・せ・え!」
「ぎゃん!」
 もう一度『ごっつんこ』されて、仲の悪いチームは並んでへたり込んだ。
 アキラはそんなふたりを見下ろして、盛大にため息を吐く。
「なんだかいつもと同じパターンにはまり込んでいる気がするぜ……」
 その目の前で───突然ドアがけたたましく開いた。ドアベルがかき鳴らされて、共鳴に店中が揺れる。
「あ、あ、あ……アキラ様!」


第二章(2)に続く。

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縦書き(5)に続く。




「うんこうんこってウルセエゾ!」 と思われた方、本当にすいません……




ここ数日、テンプレートを探す旅に出ていた私。
トップページの上にフリースペースがあって、文字配列が見やすくて、なおかつステキなテンプレはないものかと目を充血させながらFC2のバックヤードに籠もりきり……

なかなか 「コレハ……!」 というものに出会えなかったのですが、とうとうこちらのテンプレが私の希望に近かったので使わせてもらうことになりました。

やった……!

格段に使いやすくなってチョーご機嫌です。

よし、小説のアップも頑張るぞ!




ページが重い気がするけど、どうだろう……?

【あらすじ】
 紫堂アキラは小さな喫茶店を営む若い男である。
 邪魔ばかりする二人の子分、それとお目付け役の江森と共に毎日を過ごしている。しかし、アキラは自分の本当の姿に納得できていない。
 自分が、人間でないことに……

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(3)

 世界は一つではなく、幾つもの次元の異なる世界が秘かに息づいている。
 物質に支配された人間界の他に、単純に数えれば六つ。それぞれが独立した形で分かれていた。
 かつて存在していた、神々の住まう場所の、〈神話〉。それと人々に愛されている物語の人物が命を得た世界の〈童話〉。このふたつは準異世界と呼ばれている。そして、まだ誰も確認できていないが『ある』と伝えられている、〈虚無〉と〈聖域〉という世界……。
 異世界としては残りふたつが、重要な“命の場”だった。
〈混沌〉……霊界といわれる、人間の死後の世界。
 紫堂アキラの属する〈森〉は、動物の死後の世界である。
 動物は死ぬと、魂となって〈森〉に還ってゆく。欝蒼とした樹々に覆われた、爽やかな風の吹く「動物にとっての楽園」であり、人間界に生まれ変わる為の場所でもあった。
 生命サイクルの短い動物たちは、あわただしい生を終えて〈森〉に還り、また人間界へと何度でも旅立ってゆく。
 壮大なる円運動───輪廻転生───の果てに、動物は本能のみではなく、自分の感情、つまり『心』を持つようになる。その動物は死んだ後、動物の枠から一歩踏み出した生き物に生まれ変わる。
 それが『妖魔』である。アキラも、その一員であるという。
 人間に酷似した姿をしているが、飛躍的に発達した身体能力と、純粋な自己完結細胞を授かった完全体を持つ。怪我をしても異常な細胞の増殖により瞬く間に治癒し、エネルギー循環が生き物と違うため、食事の必要のない身体になる。
 三百年ほどの長命を誇るが、『死』を迎えると二度と生まれ変わることはない。輪廻から解放されるのだ。
 何よりも特異なのは、動物の持つ遠感や目眩ましなどの能力を、はるかに凌駕した力を操る点である。簡単に『術』と呼ぶが、争いを回避する目的でのみ使う事を許されている。
 妖魔の存在する意味は、落ち着いた精神を保ち、現世の動物が迷わないよう祈りを捧げることにある。動物を、そして動物の楽園である〈森〉を守ることと定められていた。
 その妖魔たちを統べる者───統皇と呼ばれる統率者は、蝙蝠の属性を持っている。言い換えれば蝙蝠の一族にしか統率者は生まれないのだ。
 現在の統率者はアキラの叔父にあたる。そしてアキラは、その後継者だった。黄金色の瞳を持つ者は、生れ乍らにして〈森〉に選ばれている。本人の意思とは関係なく、動物の転生を円滑にする機能の一部だった。
 動物は〈森〉を巡って休息を済ませ、統率者の手によって新たな生へと送り出される。人間界と〈森〉を繋ぐ『生命の扉』は、黄金色の力を持つ者にしか開けることは出来ない秘儀であり、一般妖魔とは桁外れの、莫大な力を必要としている。後継者たるアキラは、自分の身体にも内在する神聖な力を嫌っていた。妖魔であるという事実さえ、半分ほどしか受け入れていない。
 アキラはかつて人間として育てられた過去があったからだった。
 妖魔である自分に、そして黄金色の力に反発し、荒れた時期もあった。統率者は、そんなアキラの葛藤を理解し、暫くは好きにさせるようにと寛大な処置をとった。〈森〉を離れて人間界で暮らすことを許したのだ。自由にする代わりに仕事をする事を申し付けて……。
 こまごまとした義務の中で、一番重要なのは心を持った動物───妖魔に生まれ変わるもの───の死の際に出向き、特別な門を開けるという仕事だった。これは黄金色を持つ者にしかできない、迎えの儀である。
 死にゆく日時を予言する巫女の言葉に従って駆け付け、痙攣の始まった動物を看取る。アキラにとってやりきれない仕事だった。
 アキラは常々考える。
 死とは何か、ということを───

 鉄塔の頂上で風に吹かれていたアキラは、ため息を吐いた。
「……自己嫌悪」
 言葉に出してみると、幾分気が楽になってくる。
「八つ当りするなんて、俺って厭な奴だな。短気で癇癪持ちで……」
 指を折って数え始めるが、
「背が高いのも嫌味だし、見た目も格好良すぎるのがいけないな。菓子だってオリジナルは評判悪いが、定番物なら最高に旨いし……」
 と勢いが盛り返してくる。アキラの根は脳天気にできていた。
 この鉄塔に来ると、どんなに頭に血が昇っていても冷静になれる。かつてアキラが人間として暮らした街を一望し、優しさを思い出してしっかりしなくてはと決意する場所でもあった。
 一度きつく目を閉じてから、深呼吸する。目を開けると、もううっすらと笑む余裕が出てきていた。
「……随分と、冷えちまった」
 陽はだいぶ高くなったが、風が冷たい。
 今更ながら身震いして、皮膜を現出させたせいで大きく裂けたシャツの背を見やる。
「……また一枚だめにしたか」
 苦笑いして立ち上がった。集中して現出させれば布地と融合させられるのだが、危険なときや急いでいたりするとその制御を忘れたりする。しかしそういう時でもなければ飛んだりしないので、結局毎回シャツを捨てる羽目になる。
 もう破けてしまっているので、気にせずに勢い良く皮膜を広げると、アキラは来たときと同様に悠然と飛び立っていった。



 喫茶店に戻ると、カウンターの内側で江森がグラスを磨いている。
「おかえりなさい」
 何事も無かった顔で言ってくるのが小憎らしく、アキラは不機嫌に頷いただけでそっぽを向いた。隅のほうに脱ぎ捨てたエプロンがきちんと畳んで置いてあり、灰皿にしていた空缶も洗ってあるのが目に入る。親切なのか嫌味なのか判じかねた。
 江森の場合、大概はどちらでもなく『当たり前のこと』なのだが、いつもわざと嫌味に見えるように振る舞っているとしか思えない。
 カウンターに座り、
「コーヒーくれ」
 ぼそりと言うと、江森は嬉しそうに頷く。アキラがこう言うときは、機嫌が直った合図だと知っているのだ。
 香ばしいかおりが豊かに広がり、表面に湯気の縞が漂っているカップを出されると、アキラは参ったと言いたげな顔で江森を見上げた。
 手を乱暴に突き出して、
「みやげ」
 無理に江森の手に押し込む。
「貰いもんだ。遠慮は要らない」
「ありがとうございます」
 厳しい顔は、中身を覘くとほころんだ。
「花の種ですか。どなたから?」
「商店街を通ってきたら、どこかの子供が俺にくれた」
「それはまた……けっこうなことで」
 江森は手の平に転がして、珍しそうな顔で眺めた。
 癇癪を起こしたあと、アキラは何の変哲もないものをみやげと称して持ち帰ることがある。色ガラスのような石や、古い貝殻のときもあった。手ぶらでは帰りづらいというだけの話なのだが、江森はいつもそれを楽しみにしているふしがあった。
「ありがとうございます」
 再び礼を言うと、大事そうにエプロンのポケットにしまう。
 アキラはふっと笑顔を浮かべた。
「そういえば、今朝作ったケーキは試食したのか?」
 楽しそうだった江森の動きが、金縛りになったように止まる。
「必ず食えって言ってあったろ?」
 追い打ちをかけると、
「あの……アキラ様」
 早くも青褪めて、声まで震わせている。
「私は、どうも味音痴らしいので……できたら他の者に」
「いや、だめだ」
 絶望的な様子にやっと気が治まって、アキラは快活に立ち上がった。江森が甘いものを受け付けない体質だと知ってから、菓子を作るのが妙に楽しくなった───
 エプロンをつけて、カウンターに入りながら、
「俺はお前に味見してもらいてえんだ。ほら、今日のは一段とうまいぞ。ココナッツミルクとチョコレートをパイ生地に練り込んである。中身はフレッシュストロベリーの甘露煮。これにシュガーパウダーをかけてやると風味も増すんだ。あ、あとカスタードクリームと生クリームを乗せたティラミス風チョコレートケーキもあるぞ。サービスしてチェリーの砂糖漬けも乗っけてやるからな」
 固まったままの江森をよそに、浮きうきとケーキを切り分けた。これ以上ないほどの、不穏な目で笑い掛ける。
「絶対に食えよ。残したら承知しないぞ」



第二章(1)に続く。




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縦書き(4)に続く


読みづらいかな……? 隙間を空けるかどうか考え中です。




私の住む関東地方は、もうすっかり真夏です。
毎日毎日、毎日毎日ぼくらは鉄板の 上で焼かれてヤになっちゃうよ? といった感じで暑い。

もう暑いったら暑い。

だからとりあえずエアコンつけて、本ばっかり読んじゃってる。

最近読んだ本は、
アルトゥール・ロペス・レベルテ 著 『呪(のろい)のデュマ倶楽部』
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 著 『時の彼方の王冠』

それから急に思い立って、
ジョージ・R・R・マーティン 著 『タフの方舟 1 禍つ星』
(作者 同) 『タフの方舟 2 天の果実』
を一気読み。さすがにちょっと疲れたので、
早川いくを 著 『へんないきもの三千里』
山本弘 著 『トンデモ本? 違う、SFだ!』
軽い本二冊を読んで一休み。

今はやっぱりジョージ・R・R・マーティンの 『フィーヴァー・ドリーム』を読んでいるところ。マーティンさんは綿密な話づくりがうまいですなあ……うらやますぃ。
これを読んでしまったら、次は 『氷と炎の歌』シリーズにとりかかろうか。
第一部だけ読んだんだけど、ついなんだか重い話が続くので挫折したんだよねえ……
ファンタジーの幅を広げた感のある本ですな。

でもその前に、そろそろプレイステーション2ソフト 『ペルソナ4』 が発売になってるから、そっちをクリアしてからでもいいか……?



本の話は尽きないですねえ……




【あらすじ】
 主人公 ・ 紫堂アキラは、小さな喫茶店を営む若い男である。性格はせっかちで乱暴。
 ケーキの仕込みを邪魔をする子分を退治して、ドッと激しい疲れに襲われたアキラは、ふと自分の運命に思いを馳せ、悲しい顔を見せるのだった……

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(2)

 喫茶店のビルは、一階が店、二階と三階はアキラの住居になっている。ビルの外階段で二階のドアから入り、更に内階段を昇った三階が実質的な彼の部屋だった。
 屋根裏のように天井が斜めになっていて、灯り取りの窓から切り取られた空が覘いている。朝の仕込みを終えると、アキラはその窓から身軽に屋根の上へと昇った。
「ああ……、疲れた」
 そう言って、大きく伸びをする。何の変哲もない静かな街並みを眺めるのが日課となっていた。
 アキラの住む街は、活気こそ乏しいが住みやすさにおいてこれ以上ない所だった。都心のベッドタウンとして住宅がひしめき、病院や学校が満遍無く配置されている。交通にも不便はない。
 ただ、街の象徴として華美な鉄塔が建っているのだが、電波の中継点とクリスマスの電飾にしか使えないのが「壮大な無駄遣い」と住民はこぞって眉をしかめる。言い換えればそれぐらいの不満しかないのが、平和といえば平和だった。つまり鉄塔は、逆説的に“平和の象徴”としての役割を担っている。
アキラはこの鉄塔が嫌いではなかった。むしろ思い出深いものすらある。だからこそ、この街に住んでいるのだが……。
 灰皿代わりにしているチェリーの空缶を傍に引き寄せると、アキラは冷たい瓦に身体を横たえた。
 目の前には、遥か彼方まで屋根を連ねている街が、陽に照らされてぬくもっているように見えた。空気だけは息を吐くとまだ白い。アキラは切れ長の大きな目を細めて、屋根の一部になろうと努めた。そうすると無心になれるからだ。
 と、瓦の下から、空気よりも濃厚な気配が凝縮するのを感じて、
「……江森か」
 急に顔を曇らせて、舌打ちした。
 それに反応するように、黄色の靄が湧き出した。
 宇宙の黎明期に銀河系が出来上がってゆくさまを見るように、徐々にひとりの男の姿が形作られてゆく。
 それは形が安定すると、瞬く間に現実の存在感を得て、そこにいた。白いワイシャツと紺のスラックスという格好の男が、片膝をついて簡略な礼を取っている
「なんの用だ?」 
 アキラは驚きもせずに言って、背を向けた。
「おくつろぎの所、申し訳ありません」
 男は穏やかに言い、伏せていた顔を上げた。右の瞳だけが血の色をしているせいか、見る者を落ち着かない気分にさせる。
「ドギーとミイが捜しておりますが、いかが致しましょう」
「ほっとけ」
 アキラは、ぞんざいに言って煙草に火を点けた。
「あいつらのせいで今朝はひどい目に合ったぜ。ふたりして邪魔ばかりして……まったく、俺の子分を気取ってまとわりついてくるんなら、もう少し役に立ってもらいたいもんだよ」
「……同感です」
「そのうち飽きて、家に帰るだろ」
「しかし、戸棚のピクルスだのレモン酒だのを摘み食いして、転んだ拍子に床にぶちまけたりしていますが……」
「それを早く言えよ!」
 アキラは勢い良く身体を起こし、気が変わって、また横になった。
「ピクルスは傷んでたんだった。ま、いいか……」
「レモン酒の方もよろしいので?」
 からかいの混じった口調に、アキラはあからさまに厭な顔をした。
「あれは……氷砂糖の配分を間違えて、失敗したやつだ」
 ミイの言う通り、本当に俺ってセンスねえのかな。口に出さなくとも顔にそっくり出てしまっているアキラに、江森はちらりと微笑を見せる。
「いつものお出かけは何時ごろになりますか?」
 江森の言葉に、アキラは口を尖らせた。
「午後だ。解ってるだろ。……別に行かなくていいっていうなら行かねえけどよ」
「いえ、そういうわけでは───」
「じれったいな。はっきり言え」
 江森は薄い水色をしている空に目を向けて、咳払いをした。
「その、先ほど蜜子様の使いがみえて……」
 アキラは瞬間、睨むような目を向けた。
「……だからなんだよ?」
 突っかかるような言うと、ふたりの間に沈黙が落ちた。隙間を埋めるように小さな鳥が朝の歌を唄いながら遠い上空をはばたいてゆく。
 アキラはほとんど吸わなかった煙草をもみ消して、静かに控えている江森を見つめた。江森の方は視線を避け、自分のつま先あたりを見つめている。このままアキラが黙り続けていれば、何時間でもそうしているように見えた。
「門を開けるのか」
 たまりかねて詰問の口調で言うと、江森はようやく柔和な表情で見返してきた。
「時間と場所が解り次第、伝言鳥をよこすそうです。今はまだ午後辺りとしか」
「ふうん……」
 気の抜けた口調で言ってから、アキラは身を返して江森の顔を覗き込む。
 切り込むような目をしていた。
「もう厭だ、と言ったらどうする?」
「それは許されません」
 江森は平然と言葉を返す。
「これはあなた様に課せられた義務なのです」
「解っている。しかし、やりたくないんだ!」
 アキラは唐突に手を振り上げ、叫んだ。
「俺はすでに、〈森〉のシステムに組み込まれている。……しかし、俺の感情は俺の物だ。そうだろ?」
「……はい」
 江森が頷いた。その一瞬のためらいを敏感に捕らえて、アキラは更にきつい目つきで見つめる。
「俺は〈森〉が要求してくることを全部受け入れる訳にはいかねえんだよ。納得できない。今でもだ。───門を開けるたびについ思ってしまう。可哀想に、と……」
「それはまだあなた様が、理解してらっしゃらないからです」
「理解していない……?」
 アキラの声は引きつった。
「理解ってなんだよ。理解すれば平気になるのか? 目の前で死にゆくものを見ても、何も感じなくなるってのか?」
 乱暴に瓦を蹴って起き上がる。緑掛かった目が炎のように揺らいで、憤怒の形相に変えた。
 全ての元凶が江森であるかのように、アキラは沸き上がる激情に身を震わせて叫んだ。
「ふざけんなよ! 俺はそんなの厭だぜ、慣れた手つきで門を開けて、何事も無かった顔すんのはな! 〈森〉がそれを求めているんだとしたら、俺は〈森〉を……お前も、統皇も、ドギーもミイも蜜子も、俺自身でさえ全部否定してやる!」
「……アキラ様」
 激昂を招く覚悟が出来ている顔で、江森は片膝を突いた姿勢から立ち上がった。
「あなた様にはできません。進んで矛盾を作り出すようなことは……」
「できるぜ? 試しにやってみせようか。そんなモノはありえない、と思いさえすればいいんだ」
「そうすることによって、何か利点はありますか? ご自分の存在する意義は?」
 アキラは、肩を聳やかした。
「意義なんて無くたっていい」
「投げ遣りからは何も生まれません。それに本心からのお言葉とも思えません。私には、ただ泣き言を言っているようにしか聞こえませんが……」
 穏やかな声に、アキラの理性は吹き飛んだ。頬が紅潮して目の前が歪む。
「お前はいつもそうだ!」
 指を突き付けて怒鳴った。
「何を言っても、最後には説教臭い言葉で俺を丸め込もうとするんだよな! 癇癪起こした若造の言うことなんて、本当はまともに聞いちゃいらんねえんだろ。なにしろお前は、俺のおもり役だもんな。適当にあやしておいて、義務だの仕事だのをやらせておけばそのうち分別も付いてくると思ってんだ」
 江森は、俯いていた顔をふいに上げた。
「アキラ様、それ以上の事を仰ってはいけません」
 その瞳の強さに一瞬言葉を失ったアキラは、更に苛立ちを募らせて睨みつけた。
「なんでだよ」
 唸るように言って、江森の襟元を掴んでねじり上げる。
「言いたいことぐらい、言ったっていいだろうが!」
「いいえ、いけません」
 互いに一歩も引かず睨み合い───江森は、ふっと息を吐いて、微笑んだ。
「なぜなら……私が、悲しくなりますので」
 血の色をした右目と、黒く優しい左目は、目の前の若者に対する親愛にあふれていた。
 胸を衝かれて、目をそらす。
「アキラ様……」
「うるせえよ」
 突き飛ばすように襟元から手を離し、背を向けた。
「何も聞きたくない」
「しかし……」
「うるっせえんだよ!」
 黄色のエプロンを乱暴に脱ぎ捨てると、背中が生き物のように胎動して盛り上がる。綿シャツが内側から持ち上げられ、みるみるうちに引き裂かれた。そこから黒い翼が、蝙蝠の皮膜が現出し、アキラの背で巨大に広がった。
「あ───」
 江森に引き止める間を与えず、アキラは瓦屋根を軽く蹴って空へと飛び立って行った。



 黒い皮膜をはばたかせたアキラは、眉間に皺を寄せて清々しい空気を浴びていた。殆ど意識する事無く悠然と大空を切り裂いてゆく。
 住宅街に突き出した、華美な鉄塔。その頂上に人ひとりが座れるスペースがある。メンテナンス用の器具置場なのだが、そこはアキラが唯一ひとりになれる場所だった。
 巨大な皮膜を折り畳んでかぼそい鉄塔に降り立つと、窮屈な空間に腰を下ろす。
「───戻れ」
 呟くと、皮膜は現出したのと同じ素早さで背中に消えた。痛みに耐えているような顔を仰向ける。その目は、緑掛かった色ではなく黄金色に輝いていた。       
 闇のなかで振り返る、動物のように。
「ちくしょう……戻れよ」
 己れの瞳に呟いて、苛立たしげに瞬きする。それでも微かに黄金色がまとわり付いているのを感じて、
「くっそ───」
 必要以上に膝を抱えて、歯を食いしばった。
 彼は、人間ではなかった。


(3)へ続く。



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(3)へ続く。


気に入っていただけたら嬉しいのですが……


蝙蝠のかいなに水の月

 第一章(1)


 暦の中だけの春……。
 街はまだ朝霧の名残でけむっていた。弱々しい陽を受けてアスファルトや街灯が深呼吸したかのように、新鮮な煌めきに満ちた時刻。
 目立たない小さな喫茶店から、怒鳴り声が響いた。
「この馬鹿ったれが! 生地をこねるときは指輪を外せって言っただろ!」
 若い男の声は、三階建てビルの一階から出ていた。
 世間に知られまいとしているように、看板が植込に隠れている喫茶店である。店内には商売をしている華やかさはなく、一枚板のカウンターだけが丁寧に磨き込まれて木目の美しさを見せている。テーブル席が三つとカウンター、偽物の暖炉。店にはメニューすらなく、客など来て欲しくないという雰囲気が漂っていた。
 今はまだ開店前で薄暗く、カウンターの奥の部屋だけに明りがともっている。そこは調理場だった。
「あっ、その蜂蜜を舐めるんじゃねえよ! 高かったんだぞ、それ」
 怒鳴り声は更に響く。
「もういい! お前は何もするな!」
 調理場には二十歳ぐらいの長身の男が、睨むようにして立っていた。長い手足と猫を思わせる優美な体付き、全身に漲る精気は若々しく、『火花のような』と形容するのが合っている。
 顔立ちは、少年の顎と短い黒髪のせいで短気な性格が浮き彫りになっていた。その中でも独特の彩りを添えるのが、切れ長の大きな目だった。その瞳は緑掛かっていて、じっと見据えていても常に炎のように揺らめく、不思議な色合いをしていた。
 今は調理場にいるせいで、黒い平服の上下に黄色のエプロンを着けている。帽子代わりにバンダナで短髪を覆い、中途半端に家庭的な雰囲気を持っている。
 男の前にはテーブルがあった。
 小麦粉を練った生地が丸まって置かれ、バターや砂糖、ドライフルーツの入った皿なども、隅の方で使ってもらえるのを待っている。
 予定ではとっくにケーキに化けているはずの材料を見渡して、男は木の伸ばし棒片手に唸るような声を上げた。
「……ったく、手伝うって煩いからやらせてみりゃ、全然役に立たねえじゃねえか!」
 握ったこぶしを振り上げて、鼻にしわを寄せる。
「絶対にもう何もするなよ。お前が一歩でも動いたら、俺は暴れん坊将軍になっちまうぞ、いいな?」
「そんなこと言ったってさあ」
 のんびりと言い返したのは、手を粉だらけにした小柄な男だった。
「朝の四時半に起こされて眠いんだもん。ちょっとぐらい大目に見てくれてもいいじゃんかあ」
 と、子供っぽく頬を膨らませる。
「それにさあ、お菓子を作るのがこんなに面倒臭いなんて思わなかったんだよお」
 上目遣いに見上げて、やや媚びを含んだ笑みを浮かべた。
「……ねえ、アキラ様あ、二丁目のケーキ屋で買ってきて、今日のところは終わりにしない?」
 その言葉に、アキラと呼ばれた男はこめかみの辺りを引き攣らせた。
 小柄な男は、一瞬の沈黙に気を良くしたのか、
「大体さあ、作ったってタカが知れてるしねえ」
 自分の言葉に頷く。
「オリジナルが作りたいばっかりに、わざわざこの店開いたっていうのも凝りすぎっていうかあ」
「凝りすぎっていうか?」
 棍棒にも見える伸ばし棒を手のひらに打ち付けながら、アキラは促す。
「無駄な努力っていうかあ」
 間延びした口調が、あくびで余計に語尾が伸びる。アキラの身体がじりっと一歩近付いたのは、涙混じりの目には映らなかった。まだすっきりしないのか、腕を大きく上げて盛大に身体を反らせる。
「前に作った、あれなんか酷かったもんねえ……『あんずとプルーンと桃の、栗まぶしタルト』だっけ? ドギーなんて一口食べて悶絶してたよお。あとさあ、『英国風ごまと木苺のケーキ』も、洋風なんだか和風なんだか解らなくなってたしい、『チョコレートムースの固焼きパイ』なんて中に瓦が入ってんのかと思うほど固すぎだったよねえ?」
「ほう……つまり?」
「センスないってこと───」
 床を蹴る軽い音に、はっと身体を強ばらせた時には、背後にアキラの光る目があった。
「あっ、待って。あの」
「貴重な御意見、感謝するぜ!」
 とっさに逃げようとしたのを羽交い締めにし、伸ばし棒で首を締め上げた。
「うげ、放してえ……」
 早くも目に涙を浮かべながら、じたばたともがく。
「あの、あのあの、さっきのは、全部嘘なんですう……」
「だったら嘘の罰として懲らしめてやんなきゃな」
「待って、あの、くるし……」
 手足を振り回して
「『嘘だ』っていう方が嘘なんですう……」
「余計、赦せねえ!」
 絡み付いた手足は、器用にも男の脇腹をくすぐった。
 男は首を絞められながらひとしきり笑い、酸欠に顔色を黒くして───瞳をひっくり返し、あっけなく気を失った。
 アキラは息も切らせずにそのまま男の衿を掴み、鬼神でも取り憑いているのかという勢いで引きずりながら、調理場を出てゆく。
 カウンターの脇を通って店のテーブル席に放り投げると、切なそうにため息を吐いた。今の男の他にもう一人、目の周りにあざのある男が伸びている。
 柔道でもやっていそうな厚い筋肉に太い首、似合わないコック姿。
 この男は、アキラが「朝の四時半にうちに来い」と言ったのに、張り切って二時半に玄関ドアをけたたましく打ち鳴らしたのだ。まだ眠っていたアキラはドアを開けるなり右ストレートでぶん殴り、不意打ちに倒れたところをとどめの膝げりで沈めた。ちなみに小柄なほうは、起こしにいくまで寝こけていたのだった。
 仲良く気絶する二人を見下ろして、もう一度ため息を吐いた。
「俺の周りには、こんな奴らしか居ねえのかよ?」
 誰にともなく呟き、調理場に戻ろうとして……アキラは足を止める。
 腕組みをして考え込み、しばらくして小柄な男の足首を無造作に掴んで引きずり始めた。段差で、頭が「ゴンッ」と床に叩きつけられたようだったが、構わずに木のドアを押して外へ。
 もう一人も同じようにして、植込の角で弱い朝陽の当たる道路に転がしておく。どう見ても暴漢に襲われて昏倒している図にしか見えなかったが、アキラは満足そうな顔で手をはたいた。
「俺って優しいな。あれだけさんざん邪魔されたにもかかわらず、仕込みで忙しい手を休めてこんな労働までして……もしかして俺ってお人よしなんじゃねえかってぐらいに優しいなあ」
 出てもいない汗を拭い、茫洋とした朝陽に挨拶するように手を上げた。
「あんな店の中じゃいつまでたっても寒いままだからな。少しでも陽に当たったほうが暖かいだろうっていう親心。うう、自分で自分に感動した。エクセレント。俺最高」
 気がなさそうに言ってから、首に手を当てて肩の関節をほぐし、乾いた音をたてる。
「……さ、仕事仕事」
 ドアを軋ませて店に入るとき、底冷えのする風に吹かれてエプロンの裾がはためいた。
「やっぱ、外も寒いな」
 腕の辺りをさすりながら、調理場へと足早になる。
 弟を泣かせた兄、といったような表情で振り返り、
「大丈夫、だよなあ?」
 と言いながらガラス窓の曇りを手で拭って、通りの向こうを眺めた。
「ま、この程度では『死』なねえだろ、普通───」
 呟いて、気楽に肩をすくめた。
 アキラは束の間、死よりも特別な『死』に想いを馳せた。皮肉と矛盾に満ちた命を考えるとき、緑掛かった目はほんの少し悲しみの混じった色になる。
「……そう、俺達は、なかなか『死』ねない」
 こぼれた言葉の重みに苦笑すると、アキラは気を取り直して調理場に急いだ。

第一章(2)へ続く。




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月夜ノ蝙蝠丸 名義ですが、お気になさらぬように。

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第一章(2)へ続く。



ずいぶん昔に書いた小説です。
闇に葬るのも申し訳ないので、ネットに解き放つことにしました。元々は新人賞応募用の原稿だったのですが、ブログ用に改編してあります。

読んでくれる方が、そして私の小説を気に入ってくれる方がいらっしゃったら嬉しいのですが。



タイトル 『蝙蝠の腕(かいな)に水の月』

死んだ動物の魂は、どこに行くのか……
動物は、動物だけが安らげる場所、楽園に行く。
主人公 ・ 紫堂 アキラの苦悩と脱力を書いた長編ドタバタ小説。

第一章
(1) (2) (3)

第二章
(1) (2) (3) (4)

第三章
(1) (2) (3)

第四章
(1) (2) (3) (4)

第五章
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)

第六章
(1) (2) (3) (4) (5)

第七章
(1) (2) (3) (4) (5) (6)

第八章
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)

第九章
エピローグ(前) (後)



完結した物語です。どうぞよろしく……!


パソコンの中で眠りについている小説達……その不憫な環境を解き放ち、ネットの海に泳がせてみようと思い立ちまして、わたくし孔雀堂はブログを始めることにしました。

これからどしどしアップロードしていきます。

どうぞよろしく。




公開予定

蝙蝠の腕(かいな)に水の月

動物の死後に関する話。 長編です。


パンサラッサの潮風

2億5千年前の地球を舞台にした、SF風ファンタジー。これも長編です。


どうか最後までアップできますように……
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